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- 第18回プンチャック・シラット世界大会 -
2018年12月13日から16日までシンガポールで開催された第18回プンチャック・シラット世界大会に参加してきました。公式サイトのメダル結果一覧によれば参加国は49となっています。さて、実際は‥‥?
今までになく短期間での大会だったため、文字通り宿舎と会場の往復しかしていない、そんな旅行記・大会記録。
第18回プンチャック・シラット世界大会概要
(1)大会について
(2)大会参加国
(3)大会日程
(4)競技種目
(5)競技結果
大会こぼれ話・裏話
12月10日(月):通路側らぶ
12月11日(火):乗り換え、そして到着
12月12日(水):審判講習とか
12月13日(木):演武部門と開会式
12月14日(金):金曜日らしい
12月15日(土):準決勝始まる
12月16日(日):最後の日
12月17日(月):弓を持ち帰る
12月18日(火):帰国
第18回プンチャック・シラット世界大会(13~16th Dec. 2018)概要
当初はアジア大会に向けて改修された新生パデポカンINジャカルタでの開催予定だった第18回大会。それがアジア大会準備の忙しさに心が折れたのか、一度は中止が公式発表された。その後、アジア大会の場で「2019年にサウジアラビアで開催する」という情報が駆け巡ったのち、結局、2018年にシンガポールで実施、となった。
一度は中止が発表されたため、開催国・参加国双方が準備期間3か月ほど、という状況であった。それでも大会公式サイトによれば過去最大の49か国の参加、となっている。とはいえ実数との差があるのが、お約束。トーナメント表などから割り出した参加国数は31、実際に選手派遣しているのは29か国。
ヨーロッパ諸国(6) : アゼルバイジャン(M6)、ベルギー(F1)、オランダ(M6,F3,MT)、ロシア(M2)、トルコ(M2)、イギリス(M2)
東南アジア諸国(8) : インドネシア、ブルネイ(M2,MT,FTR)、ラオス(M4,F1)、マレーシア(M7,F3,M;TGR,F:G)、フィリピン(M6,F4,
M:TGR, F:T)、シンガポール(M11,F6, M:TGR, F:TGR)、タイ(M9,F5,M:TGR, F:TGR)、ベトナム(M11F7,
M:TGR)
アジア諸国(10) :インド(M9,F6,MTGR,FTR)、ネパール(M3)、パキスタン(M3,F1)、韓国(M3,F1)、中国(M8)、台湾(M3)、カザフスタン(M1)、キルギスタン(M4,F1)、ウズベキスタン(M6F2)、日本(MT) サウジアラビア(M4)
、バングラディシュ(M4)
アフリカ大陸(2) :アルジェリア(M7,F2)、エジプト(M1)
その他(3) : オーストラリア(M8,F1,MTR)、スリナム(M1)、アメリカ(M1,FT)
*トーナメント表・結果一覧から各国の登録人数を計算した。最終的に試合部門男子選手145名(不在のサウジアラビア・バングラディシュ計8名を含む)、女子選手52名、演武部門男子選手49名、女子選手30名の総計275名が参加した大会となった。
**公式では参加国数49ヶ国。これは事前に大会参加意思表明をした国を指し、公式パンフにも記載されている国々。本表ではトーナメント表に選手氏名があり、実際に派遣した国を参加国とした。なお、選手氏名の記載があるものの、実際には不在で、全て相手方不戦勝となったのサウジアラビアとバングラデシュは参加国としてカウントしていない。
4日間で300人の選手を捌くため、試合場は3面使っても朝の部から夜の部までびっちり。
6:30-7:00 朝食
7:30 ホテルロビー集合後、会場着8:00
10:00-12:00 午前の部開始(予定)
12:00-14:00 昼食
14:00-18:00 午後の部開始(予定)
18:00-19:00 夕食
19:00-22:00 夜の部開始(予定)
22:00過ぎ 帰ホテル
昼食・夕食は会場に設置された食堂にて提供された。
日付 | イベント |
11(火) | 選手団到着 |
12(水) | 選手登録、テクニカルミーティング・組合抽選 |
13(木) | 演武部門決勝、試合部門1回戦、開会式 |
14(金) | 試合部門2回戦 |
15(土) | 試合部門準々決勝、準決勝 |
16(日) | 試合部門決勝、閉会式 |
プンチャック・シラットの試合には大きく分けて、体重別の階級で打ち合う試合部門と規定の型を競う演武部門とがある。今大会では以下のクラス/型でそれぞれの技が競われた。黄色は日本選手が参加したクラス。
1.男子試合部門(Tanding) Aクラス - 45kg以上50kg未満 Bクラス - 50kg以上55kg未満 Cクラス - 55kg以上60kg未満 Dクラス - 60kg以上65kg未満 Eクラス - 65kg以上70kg未満 Fクラス - 70kg以上75kg未満 Gクラス - 75kg以上80kg未満 Hクラス - 80kg以上85kg未満 Iクラス - 85kg以上90kg未満 Jクラス - 90kg以上95kg未満 Open - 85kg以上 |
2.女子試合部門(Tanding) Aクラス - 45kg以上50kg未満 Bクラス - 50kg以上55kg未満 Cクラス - 55kg以上60kg未満 Dクラス - 60kg以上65kg未満 Eクラス - 65kg以上70kg未満 Fクラス - 70kg以上75kg未満 Open - 65kg以上 |
3.男子演武部門(Seni) Tunggal (ソロ) Ganda (ダブルス) Regu (3人チーム) |
4.女子演武部門(Seni) Tunggal (ソロ) Ganda (ダブルス) Regu (3人チーム) |
試合部門ファイナリスト36名の内訳はベトナム9、インドネシア8、シンガポール7、タイ5、マレーシア4、インド・アメリカ・ウズベキスタンが各1名。最終的にメダルラリーは金7を獲得したシンガポールが総合1位となった。試合部門4+演武部門3の結果で、試合部門7試合のうち4試合を制したことになる。総合2位のベトナムは金6つ、ただし演武部門のメダルはゼロ。まさかのゼロ。ちなみにインドネシアはアジア大会の黄金チームではなく、選手1名を除いてコーチも含め総員交代していた。
タイの試合・演武部門での強さが安定してきたように感じた。また、特筆すべきは通常、最も激戦区である試合部門男子Dクラスの決勝がウズベキスタン対アメリカだったこと。棄権があったとはいえ、東南アジア勢が全く絡まない決勝戦は歴史的出来事である。
相手方棄権による勝利でも有効な試合のため、全くの勝利試合なしでメダル獲得となったのは1名のみ。最もエントリーが少なかったのは女子オープンクラスの4名(第一試合が準々決勝)、最もエントリーが多かったのは男子Dクラスの19名。男子Cクラスはこれに次ぐ18名のエントリーがあった(サウジの1名含む)。ちなみに男子で一番エントリーが少なかったのはIクラスの7名(サウジの1名含む)。女子で一番エントリーが多かったのはCクラスの10名。
MVPも表彰され、女子はシンガポール、男子はウズベキスタン。ベスト審判にはタイのベテランが選ばれた。
部門 | 種目 | 結果 |
男子試合 | Aクラス | 1.タイ 2.インドネシア 3.フィリピン、ラオス |
Bクラス | 1.シンガポール 2.マレーシア 3.フィリピン、ベトナム | |
Cクラス | 1.マレーシア 2.タイ 3.ウズベキスタン、シンガポール | |
Dクラス | 1.ウズベキスタン 2.アメリカ 3.オランダ、シンガポール | |
Eクラス | 1.インドネシア 2.タイ 3.ベトナム、シンガポール | |
Fクラス | 1.インドネシア 2.ベトナム 3.オランダ、シンガポール | |
Gクラス | 1.ベトナム 2.シンガポール 3.オランダ、マレーシア | |
Hクラス | 1.ベトナム 2.シンガポール 3.オランダ、タイ | |
Iクラス | 1.シンガポール 2.ベトナム 3.インドネシア、インド | |
Jクラス | 1.シンガポール 2.ベトナム 3.イギリス、タイ | |
Open | 1.ベトナム 2.インドネシア 3.エジプト、アルジェリア | |
女子試合 | Aクラス | 1.インドネシア 2.マレーシア 3.ベトナム、タイ |
Bクラス | 1.ベトナム 2.シンガポール 3.インドネシア、アルジェリア | |
Cクラス | 1.ベトナム 2.インドネシア 3.ラオス、シンガポール | |
Dクラス | 1.シンガポール 2.タイ 3.インドネシア、マレーシア | |
Eクラス | 1.マレーシア 2.インドネシア 3.インド、シンガポール | |
Fクラス | 1.ベトナム 2.タイ 3.オランダ、インドネシア | |
Open | 1.インドネシア 2.シンガポール 3.ベトナム、インド | |
男子演武 | Tunggal | 1.シンガポール 2. タイ 3.インドネシア |
Ganda | 1.マレーシア 2. シンガポール 3.インド | |
Regu | 1.タイ 2. フィリピン 3. シンガポール | |
女子演武 | Tunggal | 1.シンガポール 2. フィリピン 3. タイ |
Ganda | 1.シンガポール 2. インドネシア 3. マレーシア | |
Regu | 1.インドネシア 2. シンガポール 3. ブルネイ |
大会こぼれ話・裏話
日付が変わってすぐ、11日の便なので10日のうちに空港へ向かいます。この前の週にインドネシアからの訪日団対応をしていたため、事前の座席指定を忘れていました。おかげでネットチェックイン時には通路側全滅。しかもほぼ満席便らしく、選択の幅がない。もう数年ぶりに通路側じゃないフライトを覚悟しました。
それでも諦めきれず、荷物預け入れ時にダメ元で聞いてみたところ・・・なんと。エンタメ機材が故障している通路側席がある、と。そこでよければ案内できると。いやっほう!深夜便、どうせ寝るだけ。充電さえできればエンタメ機材の故障など些事。
まあ、どうせ寝てるだけなので、窓側だろうが中央だろうがいいじゃないか、と思わないでもないですが。でもやはり、通路側がいいのです。気兼ねせずに立ち上がり、トイレに行けるこの気軽さ。通路側らぶ。昔々は壁に寄りかかれる&景色の見られる窓側らぶでしたが、通路側の気楽さが上回るようになりました。
早朝、まだ日が昇る前のバンコクに到着。そして、国際線乗り換えポイントで靴を脱がされました。ランダムピックアップではなく、全員という徹底ぶり。日本は目についたスニーカーだけのような気がするので、タイの方がピリピリしてるのかな。待ち時間2時間以上、空港で腹ごしらえの後、待合室へ。そこには目的地を同じくするパキスタンチームがいました。奇しくも同便です。
バンコクで2時間進めた時計の針を1時間戻して、シンガポールに到着しました。なんか変な気分。シンガポールは、いつ来てもきれいな空港です。そして今回、初めて日本以外の空港で「荷物の取っ手が全て同じ方向(客側)」というのを見ました。少々詰めの甘さがあったりはしましたが、結構な驚きです。
税関を通って外に出ると、大会ロゴのカードを持っている人がいました。珍しくスムーズに送迎係に会えた!・・・というのは勘違いで。どうやらパキスタンチームを迎えに来ていたようです。日本チームはこの時間のお迎えリストに入っておらず、「え?」という反応をされました。彼らのリストによれば、夜便になっているとのこと。それ、明日到着する選手だから。飛行機リスト、ちゃんと提出したんだけどなあ。意味なし。明日の選手のお迎えが不安になります。まあ、シンガポールは公共交通機関で自力移動ができる国ではありますが。
到着便変更の連絡がうまく届いておらず、違うターミナルに放置されていたブルネイ審判組とも合流し、事務局手配の車で移動です。審判と選手は宿泊先が異なりますが、選手宿舎となっているホテルはチェックイン時にクレジットもしくはデビットカードの提示を求められています。どうやら、部屋になんらかの傷を負わせた場合の請求先となるようです。しかし、チェックイン時の日本チームにカード所有者がいないため、cizmaが同行することになっていました。
選手宿泊ホテルと審判宿泊ホテルの間に、今日だけはシャトルバスが出るとの話でもありました。つまり、一度、選手宿泊ホテルに集合して、それから審判宿泊先に向かうのです。手配した移動用ミニバスの都合もあるのでしょう。しかし、実は選手宿泊ホテルに立ち寄る必要はありませんでした。「クレジット・デビットカードを持っていないチームも多く、ホテルと協議の上、カードを提示して担保とするのではなく、大会事務局が別途担保することとなった」とのこと。なんじゃそら。
ともあれ、大会事務局が手配する昼食は選手宿泊ホテルでしか取れません。ここで昼食をいただき、後から到着したマレーシア審判、チームと話しに来ていたアメリカ審判とともに、審判宿泊ホテルに移動しました。ちなみに我々が移動する段になってやっと、同便到着だったパキスタンチームがホテルに現れました。同じコモンウェルス仲間なのに入管が別室対応で、入国までにかなり時間がかかっていたようです。
チェックインして一休みした後、夕方に審判団は会場入りしました。いやー、随分と立派な会場です!シンガポール・スポーツ・ハブ、要は国立競技場を中心とした一大スポーツエリア。2015年のSEAゲームズに向けて新設されたものと思われます。(ネットには2014年完成、とあった) 会場内の飾りつけは明後日13日の本番に向けて8割がた完成、といったところ。
会場で夕飯をいただき、その後、大会運営委員長から審判団に歓迎のあいさつがありました。要は明日からに向けての全体ブリーフィングです。なにやら気合の入ったパワポを見せられました。が、印象に残ったのは、委員長が挨拶の中で言及した大会予算。シンガポールは何をするにしてもお金がいる、と繰り返していましたし、金策は本当に頭の痛いところだったのでしょう。3か月でゼロの状態から、ここまでの大会規模を準備するのは並大抵のことではなかったに違いありません。もちろん、「ジャカルタがやらないならシンガポールでやる」と手を挙げるにあたり、まったく算段なしだったわけではないでしょう。それでも、この大会期間中、何かといえば「20ミリオンSGD(≒2億円)」と言っていましたので、相当、金策に苦労したのだと思います。
メモを見返すと、委員長挨拶では他にもいろいろと言っていました。
・シンガポールで一番予算がついているのは水泳だ。シラットはここ数年でやっとトップ10をキープできるようになった。
・この大会がシンガポールだけではなく世界のシラット関係者のレガシーとなることを目指している。
・スポンサーがいるからチャンピオンが出るのではない、チャンピオンがいるからスポンサーがつくのだ。
・ライブ中継されるので、審判の皆さんにはきちんとアイロンがけされた制服で毅然とした態度、きびきびとした動作で会場に居てもらわないと困る。
・シンガポールの人はシラットを聞いたことはあっても試合を見たことはあまりない。
・78か国を招待し、参加するのは49か国。選手数は500人以上の予定が、入国ビザの問題などで最終的に300人程度になっている。
・各国から多数の人間が集まる場には覆面の公安関係者がいるのが通常だ。テロや爆弾といったことを口にしないように。冗談だったとしても、当局はそうは捉えない。
アイロンがけ、大事なことなので2回言いますって感じだったのを思い出しました。別な日ですが、大会仕様制服の支給が間に合わず、諸事情によりホテルでアイロンがけもできず、遠路持参したために若干皴の寄った審判服を着ていた某国審判が、某氏に「なんだその皴の寄った制服は。明日もそのままだったら控室待機だ、国に帰れ。アイロンがけしてこい!」ってパワハラされてたな・・・東南アジアのアイロン至上主義は解せぬ。
この日の帰投は22時。明日は8時にホテル出発です。
本日の予定は午前・午後は審判講習、夜にはVIP夕食会です。VIP夕食会、なんかよくわかりませんが、GALAディナーとか言うそうで、大統領が来るとか来ないとか。ともあれ、お尻の時間は決まっているので、サクサクと予定を消化。
ところで、シンガポール滞在2日目、実はまだ現地SIMを購入していません。空港で買おうかな、と思いながらもホテルの近くで買えるだろうと見送ったのがまずかった。朝食後、バスが出るまでの空き時間を使って一番近くにある徒歩5分程度のコンビニに買いに行ったところ、SIMの取り扱いがありませんでした。このコンビニはGS併設のものなので、街中の711とは勝手が違うようです。ホテルから一番近い711は徒歩15分程度と聞きました。うーん、今朝のうちに手に入れるのは無理です。会場入りしてしまうと、これもまたなにもない。正確にはショッピングモールがあるのですが、そこまで行く時間的余裕がないのです。仕方なく、シンガポールの友人に購入・ホテルへの配送を頼みました・・・空港で買っておけばよかったわー
講習自体はいつもの”復習”です。新しいことといえば、今大会で使用する採点機械のみ。今回はここ最近の主流、タブレットを使用するようです。ちなみにSamsungでした。大会ごとに担当する請負が異なるため、採点機械が大会によって違うだけではなく、UIも違います。なんで世界統一のUIやシステムを構築しないのか、と毎回思います。独占を嫌う空気でもあるんですかねえ。大会ごとに採点機械のUIが違う競技、他にもあるのかな。
今大会のシステムはインドネシアのグループが受注していました。eventsilat.comという人たちです。どうやらジャカルタが本拠地のようで、聞けばレンタル料もあまり高くはありません。レンタルというか、システムの年間利用料です。ただし、この利用料の中にハードは入っていないため、大会運営側がタブレットやPC、プリンターなどを用意する必要があります。
タブレット(タッチパネル液晶含む)を使った採点で感じるのは、試合部門(タンディング)においては正直、物理ボタンがあった方が楽だな、ということ。それは今回も同じです。演武部門(スニ)に関しては、今大会のUIは今までの中で一番、紙の採点表に近く、わかりやすかったです。
写真を撮った時はまだ準備中だったため、選手名は仮、諸々インドネシア語表記のままです。本番には英語になっていたと思います。確か。…うろ覚えだな。(担当者は英語になる、と言っていた)
審判にとっての使いやすさはもちろん必要ですが、それよりも重要なのはスムーズな運用。こればっかりは本番にならないとわかりません。機械トラブルの少ない大会であることを望みます。
昼食を挟んで午後の部が始まろうという頃、cizmaは呼び出しを受けました。今大会には審判として参加していますが、一応、協会会長も務めています。その協会会長として集合がかけられたのです。許可を得て講習を抜け、指定の集合場所に向かいました。
何かと思えば・・・なんだったんだろう、あれは。最終的には、スケジュールに入ってはいないけれど、せっかく協会会長など各国からの関係者が一同に会しているのだから、それぞれが課題や状況を話す場を作ろうじゃないか、という話に落ち着きました。確かに、前々回までは毎回、世界大会期間中の休養日に、PERSILATミーティングと称して各国協会(もしくは関係者)が集まる場が設けられていました。二大会連続でそういった場がないと、次に顔を合わせる、もしくは人が集まる機会は2年後となってしまいます。結局、15日の夕方に場を設定することとなり、解散。cizmaは講習会場に戻り、終盤となっていた講習に合流しました。
夕方前にはホテルに戻ってGALAディナーの準備です。出発前に豪華ディナーがあるとの通達がありましたので、ルバラン仕様のキンキラを持参していました。それを着て集合場所に行ったら、なんかもう「お前誰だ」扱い。皆、軽く失礼だなw
主賓はSportsSingaporeのCEO氏。SportsSingapore、官組織のようです。Wiki先生によると「新加坡体育理事会」と なっています。サイトの説明を読む感じでは、JOCではなく日体協+スポーツ庁みたいな印象です。そしてもう一人、大会のメインスポンサーであるaladdin.com(ハラル製品の通販サイトらしい)の創業者も主賓でした。
コースの中華料理をいただきながら、シンガポールのマレー舞踊の余興・参加各国(主に会長)への記念品贈呈が行われました。この記念品贈呈でマスコットのぬいぐるみをいただきました。あと、アラジン魔法のランプ。
余興のマレー舞踊はマレーシアフェスで見たものとの違いが全く分からなかったです。後日、シンガポールの伝統舞踊団で伝統舞踊や振り付けを生業とする、マレー系シンガポーリアンの友人にこのことを言ってみたところ(失礼な話ではある)、「あ、おんなじだよw」と返されたのには若干拍子抜けしました。違いを語られるかと思ったんですけどね。そっか、同じなのか・・・まあ、そうか。
ホテルに戻るともう22時過ぎ。明日はいよいよ大会初日です。いきなりの演武決勝、日本選手がんばれ。
あ、SIMが届いてない・・・会場のwifi利用にはSMSを受け取れる電話番号が必須で、海外で電波のない日本SIMでは日中はネット接続ができないことになってしまいます。それは困る。結局、別の友人が23時過ぎに持ってきてくれました。ありがとー!そう、cizmaはネット依存気味の現代人。
さて、今日から本番、そしていきなりの演武部門決勝・・・規定上、8名以上のエントリーがあった場合は予選組に分け、各予選組から上位3名が決勝進出となっています。しかし、今大会は実施日程が実施種目・参加人数に比べて短いため、演武部門はエントリー人数に関わらず、変則的に即決勝です。それも3面同時進行。
演武部門は規定時間が3分です。3分ジャストが基本で、前後5秒、つまり、2分55秒〜3分05秒の枠をはみ出た演武が減点(大幅な逸脱は失格)対象となります。これはトゥンガル(ソロ)、ガンダ(ペア)、ルグ(チーム)全てに共通する規定のため、3面同時進行・同時計時で競技を実施することが可能です。まず、第1アリーナで女子トゥンガル、第2アリーナで男子トゥンガル、第3アリーナで男子ガンダの3種目が行われました。
予定では9時半開始12時終了の演武部門6種目、最終的に終了したのは14時半。残念なことに採点システムと音響設備のトラブルで、ものすごく時間がかかりました。採点機械は無線(wifi)接続のタブレット。これがうまく接続できないのが、最初のトラブル。この調整に開始が押しました。それでも解決しなかったようで、審判は入場前に「接続トラブルのため”紙採点”となります」と案内を受けました。が、cizmaが入った第3アリーナはタブレット採点でした。紙採点じゃなかったの?と思いつつ、紙の準備がない以上、タブレットで採点をするしかありません。
演武ののち、通常あるべき選手の演武時間がアナウンスされませんでした。採点するにあたり、3分ジャストの演武と減点にはならないまでも3分3秒の演武には差をつけるものなのですが・・・アナウンスされないのではどうしようもなく、進行に?が浮かびます。
さらに、ガンダの場合は事前に申告した回数と異なる数で武器を落下させた場合、減点となります。また、落下による減点だけではなく、総合点への影響も免れません。通常は事前に会場および審判に対し、この「事前申告武器落下予定回数」がアナウンスされます。しかし、このアナウンスも入りませんでした。
結局、競技終了後、音響トラブルのためアナウンスがなかったのだと判明しました。昨日、あれだけマイクチェックをしていたのは何だったんだ(苦笑)
さて、一番手の選手が終了したのち、今度は第3アリーナで接続トラブル。競技後に知りましたが、第2アリーナは最初の通知どおりに紙採点を行っていたそうです。そして第1と第3はタブレットだったのですが、タブレットが会場の指定wifiをちょくちょく見失います。このトラブルを解決するのに30分以上はかかったのではないでしょうか。一番手の選手から二番手の選手まで、ものすごーーーーく時間が空いた記憶があります。待機している選手は大変だったことでしょう。
あとから聞いたところでは、通常バックヤードで行われる演武用武器のチェック(規定サイズかどうかを確認することがルール上定められています)もなかったとか。いかに運営が初日にテンパっていたかがわかるというものです。
競技の様子はYoutubeのSportsSingaporeで見ることができます。演武部門は”Artistic”と表記されています。
注目どころ、その一は武器落下の減点を乗り越えて銅メダルを獲得したインド男子ガンダ。初めてインドの演武を見た時に比べると、雲泥の差、格段の進歩です。その二は最後は2人になってしまったオーストラリア男子ルグ。非東南アジア圏で3人揃って制定型を行うルグに選手(チーム)を派遣するのは、なかなかハードルが高いのです。そんな種目に選手を出したオーストラリアに惜しみない拍手を送りたいと思います。ただ、残念なことに選手のうち1名が途中で頭が真っ白になったらしく、退場・・・この時点で失格です。一般的な大会であれば、ここで笛がなって演武も終了になります。しかし、これは世界大会。しかもオーストラリアの選手です。母国ではこういった緊張感のある場面で演武を行う機会はないでしょう。経験値を積むという側面を考慮し、失格という結果は確定していますが、残った2名で最後までやり遂げる時間が与えられました。
予定時間を大幅にオーバーしつつも、なんとか終了した演武部門。1時間の休憩=昼食を挟み、16時から試合部門が始まります。
結局、試合部門が始まったのは16時半でした。そこから11試合を行い、20時過ぎからの開会式の中で1試合、つまり、本日は各アリーナで12試合=計36試合を実施することになっています。開始時間が予定より2時間以上押していますが、全部消化できるんでしょうか。
VIPの来場が決定している開会式の開始時間は動かせません。そのため、11試合全部を行うことはできませんでした。2試合が翌日に回ったと記憶しています。
審判としてギリギリまで試合場に居たのち、急いで開会式仕様に衣替え。開会式には協会会長として参加しないとなりません。着替えてすぐ、開会式の招待者席へ向かいます。こちらで主賓のシンガポール大統領が来るまで待機です。しかし、このために審判仲間が開会式スタンバイ中に食べられた夕食を食べ損ねました。まあ、そういうこともあります。
大会委員長、SportsSingaporeのCEO氏、PERSILATの事務局長といった面々の挨拶に続き、いくつかのデモンストレーションが行われました。まず、シラット=マレーというつながりからか、「マレー舞踊」。GALAディナーで舞踊を披露した劇団(?)と同じ人たちでした。その次にタンピネスでシラットを学ぶ子供たちの演武。こちらは大会実行委員長氏の流派、GRASIOの生徒さんたちだったようです。そして、本大会では隣のホールで「マーシャル・アーツ・フェスティバル」が実施されます。そこで、いくつかの団体がワークショップなどを行います。そんな彼らによる演武が披露されました。3面同時に別の武道を見せてくれるので、目移りしてしまいました。最初のグループはキックボクシング/サバット/極真空手。次に入ってきたのは柔術と武術太極拳。これはどちらも国代表レベルの選手が出てきていたようです。最後が修道館合気道/アーニス/柔道でした。こういう大舞台で映えるのは武術太極拳/アーニス。逆に地味過ぎて気の毒になるくらいなのは、柔術と柔道。どっちも和物ですね。奥ゆかしい日本人(違う)。 そして、太鼓パフォーマンスが入り会場を盛り上げた後、午前の部に実施された演武部門の金メダリストたちによるダイジェスト演武がありました。
そういえば、今大会ではトーチリレーっぽいこともやっていました。GALAディナーにも登場したトーチが再登場です。昨夜は、よくホテルのホールに火をつけたまま入れるなあ、と思ってました。まあ、キャンドルサービスなんかと同じようなものだと思えばOKなのでしょう。しかし、大会施設では炎がNGだったようで、火を消した状態での入場、PERSILATへの手渡しという演出になっていました。
その後、ゴングを鳴らして開会を宣言し、マレーなコスプレ大会・・・もとい、土俵開きならぬブカ・グランガンが行われました。最後には無事VIPゲームが実施され、23時前にはホテルに戻りました。
開会式、正直に言えば「派手」の一言です。まず大統領が臨席してます。大統領臨席となれば、気合が入った演出になるのも当然のこと。トーチといい、ブカ・グランガンも含め、演出は相当練られていたと感じます。また、選手宣誓・審判宣誓も通例通り、開催国出身の選手・審判によって行われています。シンガポールにおいてシラットは、マレーあるいはイスラムな人々がメインとなっているため、開会式に先立ち、インドネシアやマレーシアで開催される時同様に、イスラムのドゥア(祈祷)も行われました。ただ一点、通常の開会式と異なった点を挙げるなら、「入場行進」がなかったことでしょうか。事前に回ってきた連絡では、「各国1名入場行進に選手を参加さえるように」というものだってのですが、実際には行われませんでした。大会の主役=選手が選手宣誓の1名だけというのはちょっと寂しい気がしました。ともあれ、今回の開会式で「シラットも洗練されてる」「盛り上がってる」「コンテンツとして魅力的」という印象を与えることには成功したと思います。
今日からあとはもうただひたすら、最終日まで試合、試合、試合。朝は若干の押し気味で始まりました。とはいえ、本日は金曜日。ムスリムの多いシラットでは金曜礼拝参加のため、午前の部の終わりを延長できません。
始まってみれば、演武部門での機械トラブルが嘘のように、スムーズに進みました。でも、それは機械システムの話。試合そのものは不戦試合がありながらも、第3アリーナは若干押し気味なスケジュール。
第1、第2アリーナは順調に予定を終了しましたが、第3アリーナは時間までに全試合を終えることができませんでした。2試合残ってますが、会場に「午前の部はこれで終わりです。14時から再開されます。」とアナウンスが入りました。この時点で第3アリーナの審判は金曜礼拝に向かうバスに乗り遅れそうな勢い。バッタバタでバス乗り場に向かおうとするムスリム審判。しかし、ここで上層部より待ったがかかります。午前の予定を終了させられていないのは第3アリーナだけだ、全部やらないとだめだ、と。
すでに終了のアナウンスが入っているというのに、もう1試合終えてからじゃないと終わりにさせない、とのことでした。次の試合の審判リストはすでに明らかになっていましたので、慌てて呼び止めます。でもすでに気持ちは金曜礼拝に向かっているムスリム審判たち。さすがにそれを「仕事だよ」と引き留めるのは、ムスリムとして気持ちのいいものではありません。本来、審判長に指名された審判の交代権限は現場にありませんが、リストにあるムスリム審判たちを、金曜礼拝に行かない女性審判や自主的に交代を申し出てくれたムスリムではない審判たちと交代します。そして試合場に入ってみれば、採点機械はすでに仕舞われ、会場の電気も落とされています。当然です。 IT班が「あれ、終わってない?」と慌てて電気をつけ、記録を取れるように準備を始めました。
選手の入場を待つことしばし・・・・なんと不戦勝!トルコ対バングラデシュの試合でした。幽霊参加のバングラディシュに対しトルコの勝利です。ってこのためだけに金曜礼拝に行けないかも的な大騒ぎをしたのか。なんだかなあ。不戦勝試合なのは事前にわかっていたはず。先に言ってくれれば、あんな大騒ぎにならなかったのに。
シラットで関わっていると、シンガポールはマレー主体、もしくはムスリムメインのように勘違いしてしまいます。だからこそ、参加者の大半がムスリムであるシラットの大会に、ムスリムマジョリティの国で開催されるのと同じような運営を、無意識に求めてしまっていたようです。礼拝時間、礼拝場所、食べ物等々…しかし、統計上、シンガポールのムスリムは2割弱、国の制度を形作るのはマレー系やムスリムではないはずです。そういった国でムスリムとして、さらには先進国的ライフスタイルの中で日々をおくるのがどういうことなのか、cizmaは身をもって知っています。スケジュールに礼拝時間が考慮されず、礼拝場所(部屋)の用意がなく、ホテルの食べ物には豚製品が並んでいる。これは結局、運営側に配慮がないのではなく、ムスリムである彼らの、この国での日常の延長に過ぎないのだと思いました。
当初、礼拝場所として案内されたのは、トレーニングルームの一角、仕切りなし。正直、運動部の部室と同じ臭いがしましたよ(苦笑)
さて、試合で特筆すべきは男子Eクラス。SNSを賑わせたアジア大会決勝カード、インドネシア対マレーシアの再戦です。アジア大会インドネシア代表のうち、世界大会に参加しているのは彼だけ。他はコーチも含め、総入れ替えしています。対するマレーシア、ベトナム、シンガポールといった他の強豪国の場合、半数以上はアジア大会代表選手だったようです。つまり、再戦カードはこの1枚のみ。
この試合は準々決勝だったため、マレーシアのMr.シラットはこの数年で初めて、メダルなしで大会を終えたことになります。マレーシアも政権交代があり、シラットを取り巻く環境が変わってきているようです。Mrシラットがメダルなしで世界大会を終え、一つ、時代の区切りなのかもしれません。
そんなこんなでホテルに戻ったのは22時半。長い一日でした。
午後の部からは準決勝です。準決勝からはアジア大会同様に「ビデオ判定」が導入されることがアナウンスされました。今大会はビデオ判定があると聞いていたのですが、ここまで全くその気配がなかったので、どうなっているんだろうと思っていたのです。レフェリーの判定に不服がある場合、1試合に2回まで抗議カードを掲げてビデオ判定を求めることができる、というのがシラットのビデオ判定制度。このシステムを導入しているはずなのに、なぜ昨日の試合ではどのコーチも不服があった場合にカードではなく大声でアピールしているのか、謎だったんですよね。準決勝からの利用ということならば、納得です。
この朝のミーティングの後、審判全員で集合写真を撮る時間が取られました。cizmaの発案です!いや、正確には隣に座っていたオランダ審判のアイディア。「俺たち、まだ試合会場で集合写真撮ってないよな〜撮りたいよな〜」と言ってきたのです。「責任者に言えばいいじゃない?」と言えば、「俺がそんなこと言っても一笑に付されて実現しないよー・・・」と。それなら、と勇気を出してcizmaが手を挙げてみました。結果、試合開始までまだ少し時間があるということで許可が下り、いい集合写真が撮れました。
午前の準々決勝はスムーズだったのですが、午後の第3アリーナは大波乱。最初の試合は男子Aクラス、フィリピン対インドネシア。準決勝第1試合ということで、ここからビデオ判定が導入されています。それにしても、アジア大会ではあんなにスムーズにいったシステムが、どうしてここまでグダグダになるのか・・・
どうやら原因の一つにはビデオカメラの位置と解像度、ファイルの格納方法、つまりはシステムにあったようです。自分で確かめたわけではありませんので伝聞ではありますが、1)(アジア大会では3台あった)判定用カメラが1台のみで角度によっては見えない 2)動画にタイムスタンプがなく再生すべき個所を探すのに時間がかかる 3)自動保存・作成されるフォルダの名前がわかりづらく該当動画を見つけるのに時間がかかる といったアジア大会のシステムとの違いを耳にしました。
また、抗議カードを掲げるコーチの側にもシステムへの不慣れがあったのものと思われます。レフェリーの判定に不服な場合に切るカードです。そして、カードを示す際はレフェリーに対し、「なぜ」不服か、を伝えることになっています。例えば、赤コーナーの選手が青コーナーの選手にジャトゥアン(投げの一種)を取られ、3点献上したとします。この場合、赤コーナーのコーチは「先ほどのジャトゥアンは無効だ。なぜなら青コーナーの選手が赤コーナーの選手をつかんだまま柔道技のように投げたからだ(シラットでは無効な投げとなる)。ビデオでの確認を求める」と抗議カードを切ることができます。レフェリー、審判長、競技委員長の3名でビデオを見て、申し立ての内容が実際にあったかどうか確認します。申し立てが正しければ=掴みがあればレフェリーの判定が取り消され、青コーナーの選手に入った3点がなくなります。申し立て内容がビデオで確認できなければ、レフェリーの判定は「生き」となり、青コーナーの選手に入った3点はそのままです。こうして出されたビデオ判定「後」のレフェリーの裁定は覆りません。それが、判定後の裁定に対しても「掴みがあったんじゃない、投げの前に掴んだまま殴られたんだ、それは反則だから減点されるはずだ」と言ったような、二度三度と食い下がるという。
繰り返しますが、アジア大会では感動すら覚えるほど、ビデオ判定システムは機能していたのです。これがどの大会でも導入されれば、シラットにつきもの(苦笑)のコーチの大騒ぎは鳴りを潜め、レフェリー・審判も仕事が楽になると思ったのを覚えています。それがなぜこうなった。アジア大会を経験していない審判からは「ビデオ判定いらないんじゃね?余計に混乱してるじゃないか」という意見が出る始末。
そしてこの第1試合は1時間かかりました。そしてその次の第2試合も1時間。確かに全体として、ビデオ判定導入後の試合は少し時間がかかるようになりました。それでも、1試合に1時間もかかったのは第3アリーナのみ。こうなるとシステムというより、それを運用する第3アリーナ担当班(cizmaも含む)がまずいのかな、と思わないでもない。ちなみに第1試合には関係者の乱入もありました。気持ちはわからんでもないけど、その服装で乱入はまずいよ・・・(気になる方は動画を探してください。名誉のために張り付けることはしません。)
さて、夕方には12日に急遽決定したPERSILAT非公式会合が開催されます。cizmaは許可を得て試合場を辞し、こちらに参加しました。もう一人、米国の審判も参加です。cizmaは協会会長と審判の一人二役ですが、彼もまた、協会副会長と審判の一人二役なのです。米国の協会会長は今回渡航していないので、彼が会合に出席することになっていました。シンガポールの協会会長でもある第2アリーナの審判長は、シンガポール協会CEOが会合に出席するため、試合場に残ります。
会合の内容は、アジア大会の大成功で鼻息荒く競技シラットの普及や新制度設計に突っ走り気味なインドネシアに対し、マレーシアから協調性を求められる、といったものでした。結論:仲良くやろう。
会合が終わって戻ってみると、あと2試合で本日の予定が終わるところでした。実は昨日の帰り際、第3アリーナの審判長に「レフェリーをやる心の準備はあるか」と聞かれ、諾と答えていました。しかし通常、事前に一度もレフェリーをしていない審判を、決勝戦に起用することはありません。本日午前中の試合でレフェリーを拝命することなく、また、午後は会合で試合場にいられませんでした。明日は全て決勝戦ですから、今大会でもまた、レフェリーをすることなく終わるようです。はたして「チャンスを逃した」のか「起用されなかった」のかは、とりあえず謎。
今日は全戦、決勝です。試合>表彰式>試合>表彰式、を繰り返し、1つのアリーナで行われる試合数は6試合。最後の試合は閉会式の中で行われるVIP御前試合です。第3アリーナの予定表を見ての感想は「今日は暇そうだな」。昨日までにレフェリー起用されていませんから、まず、レフェリーとして試合場に呼ばれることは今日一日あり得ません。次に採点審判としてですが、某国がメダルに絡むと採用されないことが多いのが経験則。まあ、有利な陪審員を選び、不利な陪審員を避けるのと同じことですから、この経験則に自分として問題はありません。むしろ変なストレスがかからなくてありがたいくらいです。もちろん、選手への採点に対して、誰かが有利だと”信じる”/不利だと”感じる”のは主観です。実際、客観的にはどの審判も、審判の誓いと白い制服に象徴されるように、公正に業務を行っています。ただ、誰かの主観が現場の指名に反映されている節があるのは、競技の運営としてどうなの、というのはあります。が、それはここで経験則や印象を元に問題にする話ではないでしょう。問題とするには根拠薄弱ですし。
ともあれ、そんな某国が絡むカードばっかりです。採点審判に任命されるとすれば、某国が絡まない午後の2試合。それまでは確実に暇。
試合、表彰式、といった流れのため、昼休みがいつもより長めでした。おかげでやっと、隣のホールでやっていた「マーシャル・アーツ・フェスティバル」を覗くことができました。そして収穫あり、です。展示されていた伝統弓を譲っていただきました!これ、小売りのサンプルかと思って声を掛けたら、単に私物の展示でした。大変申し訳ないことをしたと思います。ただ、持ち主が友人の知り合いだったこと、所有者である持ち主の奥様がもう弓は不要(怪我をしたらしい)とのことで、譲っていただけることになりました。打つ練習をする場所を探す課題はありますが、弓、欲しかったんです。閉会式の小道具として使用するため、大会終了後に受け渡しすることとなりました。
ちなみに、採点審判に任命されるかもしれない、と思っていた2試合で起用されることはありませんでした。つまり、最終日のこの日、稼働率ゼロ。他にもゼロだった審判はいるので、昨日までの自分になにか致命的なミスがあったとは思えません。ただ気になるのは、起用されかけた形跡があること。次の試合で任務につく審判リストに書かれたcizmaの名前が上書きされているのを見ているのです。しかも聞こえてきたところでは「cizmaは協会会長だから審判業務はやらせられない」という理由で、変更されたとか。さらに、「一人二役は好ましくない、会長なら会長、審判なら審判に集中するように忠告する」と責任者に最後の最後、審判団解散の際に言われました。どうやら一人二役を理由に、審判業務から外されたようです。え、今更?としか言いようがない。
一人二役がNGならば、なぜ昨日までは審判業務につかせていたのか。渡航後に一人二役になったわけではなく、もう何年も一人二役でやってきてるのです。最初から今大会の審判に指名しなければいいじゃないか、とも思います。もっと言えば、今大会には他にも一人二役の審判はいるのです。彼らは最終日に審判業務をこなしていました。理由と状況に一貫性がなく、正直に言えば、取ってつけた理由で干されたとしか思えませんでした。救いは稼働率と日当が連動していないことでしょうか。控室に座っているだけで日当が入るなら上等です。とはいえ、気分が悪いのは事実。この気分の悪さとトレードできる金額かといえば、そんなこともなく。チ。
沸々と悔しさが身の内に凝りのを感じながら、ホテルに戻ったのは22時近く。気分を切り替えるべく、兄弟子と出かけることにしました。やなせたかし先生は偉大。満腹は正義。
彼らの主張もわからなくはないのです。主張の内容というよりはその背景、ではありますが。まあわかったところで一貫性に欠けるのは事実ですし、あったことがなかったことにはなりません。それでも対峙するときは、毅然と笑顔でいたいと思います。信頼関係はまず、自分が相手を信頼することから。なにか一つが気に入らないからと、ぶすくれた顔でいては、良い人間関係を築くことはできません。ちょっと違うかもしれませんが、「今頃パフェ」は真理だと思いました。
昼にチェックアウト、夕方の便で帰国です。初めて、ゆっくり朝を過ごします。昨日までは7時前に朝食を済ませ、8時にはホテルを出てましたから。
空港までは昨日の閉会式で会った古い友人が送ってくれることになっています。ホテルで帰国する関係者の交通手段を差配している大会事務局に、その旨を伝えます。cizmaはGRABで空港まで送迎予定でしたが、まだ手配していないので問題ない、とのことでした。
迎えに来てくれた友人は荷物を見て、「この弓はどうやって持ち出すんだ」と聞いてきました。確かに譲られた袋はカバーでしかなく長旅に弓が耐えられる仕様ではありません。しかもオマケで矢を付けてくれています。譲ってもらった時には、持ち出しのことまで考えてなかったんですよね。しかも、シンガポールの厳しさを甘くみてました。
インドネシアなどでシラット用武具(刃の潰れた演武用)を購入しても、トランクに居れれば問題ありません。トランクに入らなくても、受託手荷物(段ボールとか)にしてしまえば入出国に咎められることはないのです。しかし、ここはシンガポール。思い返せば入国時に競技シラットの演武用ゴロック(短剣)とトヤ(籐の長棒)すら、入管で止められています。これは大会事務局が事前に手配していた、当局からの「本武具は競技用であり、大会参加にあたって一時的に持ち込まれるものにつき、通常必要となる許可証を所有者が保持していなくても入国することを認める」という書状を見せることで通過できていました。
ただ、この厳しさは「入るもの」に対してであって、「出ていくもの」には関係ないのかと思っていたのです。それがどうもそうではないようで・・・こりゃ困った。
調べたところ、弓矢は適切に梱包されている限りにおいて、受託手荷物として預け入れが可能、ただし機内持ち込みとしてはどうあってもNG、と判明しました。ありがたいことに友人の家には段ボールがありましたので、これをバラして弓矢を梱包します。若干の不安はありますが、なんとか日本まで持ち帰れそうな仕上がりになりました。チェックインでは同行してくれた友人が「棒です」と押し切って、預け入れに成功。確かに、棒といえば棒です…ま、いっか。
トランジットのバンコクでは少々待ち時間が長め。せっかくなので、初めて免税店で(cizmaにとっては)高額商品を物色です。実は今回の滞在で腕時計を失くしました。10年近く使ったのかなぁ・・・5年以上は使っていたと思います。ウドゥーをする際に外して、そのまま忘れたようです。気づいたときには遅く、遺失物としての届け出もありませんでした。もうずーっと昔からアナログな腕時計派で、携帯を持つようになっても、それは変わらず。携帯でも時間は確認できますが、取り出す>画面電源入れるという2ステップが辛すぎる。そんなわけで、腕時計がない状態は結構ストレスだったのです。そんなお高い時計は買えませんが、このストレスから脱出すべく、時計売り場を訪れました。一目ぼれ、とまではいきませんが、これなら、という時計が、幸い妥当なお値段だったので購入。あとで調べたところ、日本で買えばもう少し安価で手に入った可能性がありました。でも、後悔はない。必要な時に納得できる値段で手に入ることの方が大事。
アナウンスのないまま遅延した帰国便。待合室で大分長いこと待たされましたが、待ちくたびれたころに搭乗となりました。寝て起きれば冬の日本です。
1週間ぶりの日本は冬。出発前は暖冬で暖かっただけに、ギャップに身体が縮みます。年末まであと10日という忙しさも手伝い、帰国してホッと一息という気分にはなれません。ともあれ無事に帰宅、弓も壊れることなく受け取れました。今回の渡航で最大の収穫は、弓。
さて、恒例(?)の審判としての振り返りですが・・・もう、大会に参加するごとに稼働率が落ちている気がしますよ。審判としての技量を磨く機会が少ないのが原因なんでしょうか。それとも、個人的になにか資質に問題があるんでしょうか。もうわかりません。審判として年月だけは中堅、技量は初心者に毛が生えた程度、と使いづらいのかもしれません。
とはいえ今大会では稼働率が低かった、と感覚で言っても、あまり意味はない気がしてメモを見返しました。15日は会合で試合場を離れ、4試合分のデータがありません。それを差し引いて、第3アリーナでは演武部門も含め、251回の審判業務をする機会がありました。演武部門採点、レフェリー、採点審判の区分は別として、国別に何回=何試合の業務に携わったかを見ると次のようになりました。
cizmaが試合場を離れていた間に他の審判は業務をしているわけですから、cizmaの業務回数は最終的に他よりも下がります。これは仕方ない。ちなみに()内は第3アリーナに複数いた同国審判です。つまり、インドネシアの審判は3人いたことになります。
1試合に2人の同国審判が入ったこともありましたし、対戦カードによっては入れないものもある(インドネシア対シンガポール戦にインドネシアとシンガポールの審判は起用されない)ので簡単には言えませんが、251回を15人で割った数が一人辺りの平均業務可能回数となるはず。その数は17。これを大幅に下回るのは日本、ベトナム、インドネシア…シンガポールは41を3で割ると同じく大幅に下回りますが、見ていたところでは一人明らかに起用率が低い審判が居たので、2.5で計算した方が実態に即しています=ほぼ17。
日別にみると、インドネシア審判は各日で起用率が平均値より低いです。ベトナムは13〜15日は平均値に近いのですが、決勝の最終日だけ起用ゼロ。日本、つまりcizmaは13,14日は平均値で15日は席を外したこともあり平均以下、16日はゼロ。こうしてみると16日に起用されなかったのは、15日に「会長として」長く試合場を離れたことが原因なのでしょう。インドネシアとベトナムの起用率が低い理由は不明です。
16日に起用されなかった理由がそれとして、やはりレフェリーに任命されなかったのは残念です。他の非東南アジア圏審判がレフェリーを拝命していたのを見れば、なおさら。また、繰り返しですが、16日に起用されなかった理由がほのめかされたのは「全てが終わった後」です。理由がわからないままに暇だとやりきれない気分で腐ってきます。15日に場を離れたのは自分の判断ですし、「出席するように」との要請もありました。しかし、16日の起用に影響するのであれば、先に言って欲しかったというのも本音です。会合出欠の判断材料の一つにはできました。しかも、同じように一人二役で会合に出席し、その後の起用に影響の出ていない審判がいるのです。一人二役がNGなら、内規なり細則なりに規定することを求めます。
ともあれ、審判資格を取得してから10年、自分では誠実に真摯にやってきた自負があります。がしかし、当然ながら評価・起用というのは外がするものであって、自己評価では意味がないのでしょう。強いて言えば、最後の審判の日に「誠実に向き合った」と胸を張っていられることくらいでしょうか。インシャアッラー。
あーもう次だ次!くっそう、見てろよ!!