- 忘れまじ新加波1942 -

 2017年11月19日から22日まで、マーライオンの国シンガポールに行ってきました。あと、ちょっと足を伸ばして23日から26日まではマランの実家へ。

 元々は11月22日から26日まで開催されるシンガポールオープンに参加する予定でした。それが諸事情により規模縮小、日程変更で11月18,19日の開催となり、選手が参加を断念。シンガポールで兄弟子と合宿の後、大会に合流するつもりだったcizmaの予定も宙ぶらりんとなりました。予定というよりは、購入済みの航空券をどうしよう、という・・・格安なのでキャンセルには手数料がかかります。合宿する気でもいましたし、キャンセル手数料とほぼ同額でインドネシアに行けます。同じお金を使うなら、短期滞在でも久しぶりに実家に行こう、という流れです。

 宿でゴロゴロ+練習が基本のシンガポール3日間と食っちゃ寝の実家(マラン)滞在2日間+移動日の一週間。日ごとに章立てするほどのものでもないので、シンガポールでした観光の話をつらつらと。

忘れまじ新加波1942

 到着初日にドリアンを満喫し、翌日はゆっくりと午後から夕方まで練習。二日目となった21日に友人たちと観光をし、22日は午後の練習まで一人でふらふら。
 二日目に連れて行ってもらったのは「ブキ・チャンデュ記念館」。どこか行きたいところはあるか、と言われて「フォードの旧工場」と伝えたのですが、なぜかこちらへ。フォード旧工場の知名度がないんでしょうか、「大戦の記念館」と説明したら激戦地の方に行くことになりました。基本路線は同じなので、まあ問題なしです。

 インドネシアと関わる中で、それこそ初めて訪問することになった時から「DAINIPPON」のことはそれなりに学びました。一方、あくまで訪問者としてしか接していないシンガポールについては、昭南島と呼ばれた時期があったことこそ知っているものの、それがどのようなものかは全く知りません。街を見てるだけだと、過去との連続性を感じづらい、というのもあります。テレビ番組(多分、NHKスペシャルの何か)でフォード旧工場記念館の存在を知った時から、昭南島だったシンガポールを知りたいと思っていました。
 そして念願叶っての今回の記念館訪問(フォード旧工場じゃなかったけど)と翌日の国立博物館の展示で、かなりお腹いっぱい。

 記念館と博物館の展示を見て思ったのは、自分が何も知らなかったということ。なによりもまず、シンガポール陥落がイギリスにとっての真珠湾であることに衝撃を受けました。時のチャーチル曰く「the "worst disaster and largest capitulation in British history"」なんだそうです。あと、南方戦線が真珠湾と同日に始まったのも知りませんでした。学校で何を学んだのか、と思わないでもないですが、この辺のことはやってないんじゃないかなあ。南方は真珠湾に隠れてるような気がする。

国立博物館の説明書き
国立博物館

 当然ながら、上の説明書きにもあるように「侵略(invasion)」なわけです。記念館のジオラマVTRでは「JAPがやってきた!」「JAPのやつら!!」とJAPの連呼でしたしね。あと、記念館には山下将軍像がありました。そして、シンガポールの友人たちは彼の名前を知っていましたが、cizmaは知らず・・・ 

 シンガポール陥落から75年の節目ということで、国立博物館では戦争回顧特別展を開催中でした。これ、シンガポール市民は無料です。常設展と合わせてチケットを購入すると、それなりのお値段ですが、開催中にシンガポールに行く(居る)人は一見の価値ありです。是非。
 この特別展で日本側が作成した「英軍降伏」映像と、連合国側が作成した「日本降伏」の映像を見ることができました。並べて展示されているのですが、降伏文書への調印というのは対等な立場による条約(契約)締結ではありえず、そこにあるのは厳然たる勝者と敗者なんだなあ、と思いました。

降伏署名の映像
降伏

 日本に降伏させられた時と同じメンツを揃えているのはもちろんですが、なにより椅子の違いに明確な「意思」を感じます。敗者の木製パイプ椅子と勝者の背もたれのある椅子に気づいた時、えも言われない気持ちになりました。

 特別展に加え、常設展でもかなりの分量が日本占領時代に割かれています。全体の流れの中で展示している1階だけではなく、テーマを決めた部屋別展示の2階にも日本占領時代を紹介する部屋がありました。インドネシアにとって”たった”3年の日本が350年のオランダより強烈だったように、当然ながらそれはシンガポールにとっても同じなんですね。

 あと、記念館と博物館で感じたのは「食べ物の恨みは怖い」。捕虜収容所での”飢え”が説明されています。cizmaの中では水木しげる作品や火垂るの墓、ガラスのうさぎ、流れる星は生きている辺りが戦争のイメージを形作っているので、どうしても「いやー、飢えてたのは捕虜だけじゃなくて日本人もなんだけど」と感じてしまうのですが、そういう問題じゃないんですよね。

痩せ細った捕虜像@記念館
捕虜

常設展示@博物館
捕虜収容所

 次回訪問の際には今度こそフォード旧工場と、今回はツアーの時間が合わず中に入れなかったバトル・ボックスに行こうと思います。