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- 第18回アジア競技大会公式テストイベント-
2018年2月10日から15日までインドネシアのジャカルタで開催された第18回アジア競技大会公式テストイベントにプンチャック・シラットの審判として参加しました。
英語ではInvitationTournamentと記載されており、本テストイベントで実施する8競技に対し、組織委員会が競技ごとに参加国を選出(招待)する形式を取っています。開催の主目的は組織委員会による、半年後の8月に実施を控えた本大会に向けた壮大なリハーサルです。
公式テストイベント概要
(1)大会について
(2)大会参加国
(3)大会日程
(4)プンチャック・シラット競技種目
(5)プンチャック・シラット競技結果
大会こぼれ話・裏話
2月7日(水):前日譚
2月8日(木):チェックイン
2月9日(金):新システム
2月10日(土):開会式、初日
2月11日(日):盛り上がりの日曜日
2月12日(月):それなりの月曜日
2月13日(火):爆死
2月14日(水):演武な一日
2月15日(木):決勝、そして閉会式
2月16日(金):フリーな一日
2月17日(土):チェックアウト
2月18日(日):帰国
第18回アジア競技大会公式テストイベント(10th Feb~ 15th Feb. 2018)概要
1962年のスカルノ時代から56年ぶりにアジア競技大会の開催国となるインドネシア。本番の8月に向け、組織委員会は準備に余念がない。その一環として、全体の問題点洗い出し、準備状況の確認のために、8競技に限定したミニ版アジア大会=公式テストイベントを実施する。主目的は運営側の各種手順の確認です。モールでいえばソフトオープン、慣らし運転とでも言えばいいのだろうか。
実施された競技は アーチェリー、体操、バスケット(5x5)、ボクシング、プンチャック・シラット、テコンドー、室内バレー、重量挙げの8競技です。うち、日本が参加(招待)したのは アーチェリー、体操、ボクシング、プンチャック・シラット、室内バレーの5競技。
メディアの報道によれば、参加国は18ヶ国。これまたメディアによれば、各競技の参加国数は次のとおり。アーチェリー9、体操11、バスケット(5x5)4、ボクシング9、プンチャック・シラット11、テコンドー8、室内バレー4、重量挙げ6。ただ、シラットの場合、ウズベキスタンが参加を取りやめたので実際は10ヶ国であった。(ソース:REPUBLIKA)
本大会で使用する選手村を使って、18か国から集まる1000人以上の選手を受け入れていた。最終的に10棟建築するうちの2棟を利用していたようである。(1棟が選手用、1棟がボランティア他運営関係者用)
プンチャック・シラットには10か国から93人(男子53名女子34名)の参加があった。 インドネシアは全種目に参加の最大チーム総勢22名。インドはタンディングの全種目に選手を派遣してきた。
東南アジア諸国(6) : インドネシア(M7,MTGR,F3,FTGR)、ブルネイ(M2,FT)、ラオス(M3,MT,F2,FT)、マレーシア(M7,F1,FG)、フィリピン(M5,
MTG, F3,FT)、シンガポール(M3, MTR, F1,FT)、タイ(M5,F3,FG)
その他(3) :インド(M7,MT,F3,FT)、キルギスタン(M4,F3)、日本(MT)
プンチャック・シラットは本大会で少なくとも10か国の参加を目標としているが、ほぼ目標達成の目途が立ったといっていいだろう。
第18回アジア大会公式テストイベント日程
事前に配布されたスケジュールでは、セッション1が12試合、セッション2が12試合となっていた。セッション1と2の時間帯が全く不明である。
日付 | イベント |
10(土) | 開会式、試合部門1回戦 |
11(日) | 試合部門1回戦 |
12(月) | 試合部門準決勝 |
13(火) | 試合部門準決勝 |
14(水) | 演武部門決勝、表彰式 |
15(木) | 試合部門決勝、表彰式 |
プンチャック・シラットの試合には大きく分けて、体重別の階級で打ち合う試合部門と規定の型を競う演武部門とがある。今大会では以下のクラス/型でそれぞれの技が競われている。カッコ内は参加選手数。
なお、事前通知においては For TGR / Artistic Category, each country is only allowd to follow 3 classes, adn from those 3 classed should be consisted Tunggal, Ganda and Regu. となっていたことに加え、男子タンディング6クラスから5クラス、女子タンディング4クラスから3クラスまで、と参加人数制限が課されていた。つまり、試合部門10種目(男子6・女子4)に対し、一つの国が派遣できる最大選手数は男子5・女子3。演武部門の場合、6種目(男子3・女子3)に対し、一つの国が派遣できるのは3種目までということであった。
しかし、下記表にあるとおり、実際に実施されたのは男子7クラス・女子3クラスであった。しかも各国の派遣選手数をみるかぎりでは、両部門における人数の上限はいつの間にか撤廃されていたようである。インドネシア・マレーシア・インドは男子選手を7名派遣している上、インドネシア・シンガポール・フィリピン・インドはトゥンガルに男女双方を派遣してきていた。
1.男子試合部門(Tanding) Bクラス - 50kg以上55kg未満 (7) Cクラス - 55kg以上60kg未満 (7) Dクラス - 60kg以上65kg未満 (7) Eクラス - 65kg以上70kg未満 (6) Fクラス - 70kg以上75kg未満 (7) Iクラス - 85kg以上90kg未満 (4) Jクラス - 90kg以上95kg未満 (5) |
2.女子試合部門(Tanding) Bクラス - 50kg以上55kg未満 (6) Cクラス - 55kg以上60kg未満 (6) Dクラス - 60kg以上65kg未満 (7) |
3.男子演武部門(Seni) Tunggal (ソロ) (6) Ganda (ダブルス) (2組) Regu (3人チーム) (2チーム+1) |
4.女子演武部門(Seni) Tunggal (ソロ) (6) Ganda (ダブルス) (3組) Regu (3人チーム) (1チーム+1) |
人数が多ければメダル数も多くなる。当然のように全種目に参加した開催国インドネシアがメダルラリーのトップを取った。
種目の後の()はエントリー数。4人以下のエントリーあるいは組合せ抽選の結果で即準決勝を引き当てた場合、3位決定戦を行わないシラットでは勝敗に関わらずメダル獲得となる。下記表のうち、*付が勝利なしのメダルを示す。
部門 | 種目 | 結果 |
男子試合 | Bクラス(7) | 1.インドネシア 2.フィリピン 3.タイ、マレーシア* |
Cクラス(7) | 1.インドネシア 2.タイ 3.ラオス、マレーシア | |
Dクラス(7) | 1.インドネシア 2.フィリピン 3.タイ、マレーシア* | |
Eクラス(6) | 1.インドネシア 2.マレーシア 3.フィリピン、キルギスタン* | |
Fクラス(7) | 1.マレーシア 2.シンガポール 3.タイ、フィリピン* | |
Iクラス(4) | 1.マレーシア 2.インドネシア 3.シンガポール、インド* | |
Jクラス(5) | 1.インドネシア 2.マレーシア* 3.シンガポール*、キルギスタン* | |
女子試合 | Bクラス(6) | 1.インドネシア 2.フィリピン 3.ラオス、インド* |
Cクラス(6) | 1.マレーシア 2.フィリピン 3.インドネシア*、キルギスタン* | |
Dクラス(7) | 1.インドネシア 2.フィリピン 3.シンガポール、ラオス* | |
男子演武 | Tunggal(6) | 1.シンガポール 2. ラオス 3.インド |
Ganda(2) | 1. インドネシア 2.フィリピン | |
Regu(2) | 1.インドネシア 2. シンガポール | |
女子演武 | Tunggal(6) | 1. フィリピン 2. ブルネイ 3. ラオス |
Ganda(3) | 1. インドネシア 2. マレーシア 3.タイ | |
Regu(1) | 1. インドネシア *他チームエントリーなしのため参考演武 |
大会こぼれ話・裏話
大会こぼれ話・裏話とか。
今回のインドネシア行は日付が変わってすぐ、8日0時台の便。7日夜には空港に居ないといけないので、旅行記のスタートを7日に設定します。8日の到着から書いてもよかったんですが、前日譚というか、出発までのバタバタをさらっと書こうかと。
今年8月に開催される第18回アジア競技大会(通称アジア大会)の開催国がインドネシアに決定したのはいつのことだったか。記憶にないけれど、これで俄然勢いついたのが、競技シラットのオリンピック種目化を目指す界隈。東京オリンピックの野球・空手採用などでもわかるように、開催国にはなんやかやと決定権(特権?)が与えられるのです。これを逃すことはない、と一層ロビー活動に熱が入ったようで、気が付けば今大会の正式競技として採用されていました。
正確には「格闘競技」として実施される競技の一部門としての採用です。「格闘競技」が初めて”正式採用”され、その中で シラット、サンボ、クラッシュ、柔術、武術(ウーシュー) が実施される、ということになります。柔道や空手、テコンドーのように独立した競技としてではありませんが、競技シラットがアジア大会という舞台で実施されることに変わりはありません。まあ、この正式決定も二転三転した感はありますが・・・決定した今となってはどうでもいい話です。
そして、スカルノ時代の1962年から56年ぶりにアジア大会開催国となるインドネシア、国の威信をかけて本大会の成功を目指しています。成功する本番を迎えるためには、練習が大事です。そのために開催されるのが、今回の渡航目的である「公式テスト・イベント(InvitaitonTournament)」になります。 組織委員会による「運営の確認」を主目的としたイベントのため、参加登録も本大会同様に各国のオリンピック委員会を通して行われました。オリンピック委員会を通さず、開催国インドネシアの当該競技統括団体に直接回答をした場合は、参加できないようでした。
ちなみに、この公式テスト・イベント、開催の第一報があったのは昨年春、実施時期は10月末となっていました。まだ半年も先のことなのに公式通知があるとは、さすがアジア大会という思い半分、こんな早くに来る情報を信頼しきったら自分が痛い目に遭いそうだという懸念半分だったのを覚えています。そして7月になり、「実施時期は2月」との通知が届きました。まあ、想定内。想定内なのはいいのですが、それでも2月まで半年以上あります。2月は本当にやるんですかね・・・と思っているうちに秋が来てもう冬でしょって頃にやっと、競技団体ではなく組織委員会からの正式招待状が届きました。おかげでバタバタ。
まず、正式な日程がはっきりしない。2月10日から17日まで、というのが当初から一環した公式通知でした。しかし、現地からは15日頃に終わるかも、とか、16日は旧正月だから長期休みだからその前に終わるだの、飛行機の手配に一番影響のある情報が確定しないのです。公式通知(日本発信)に全面的な信頼を寄せたいのは山々ですが、その案内の元となっているインドネシア発の情報が信頼しきれません。信頼できない、というよりは現地からの情報が結局正しかった、という数々の経験が、100%信頼することを拒みます。それでも、飛行機を手配する都合上、渡航日程は決めなければなりません。あまりノンビリしていると、格安のカテゴリーが売り切れてしまうかもしれませんし。というわけで、公式通知に従って航空券を手配しました。現地情報どおりに公式通知より早くイベントが終了しても、シラット組はインドネシアならなんとかできる、という自信(ツテ)もあります。
そして結局・・・出発約2週間前になって現地情報が公式通知となりました。16日が旧正月、そこから3連休のインドネシア、テスト・イベントの最終日は15日とのこと。以前の公式通知、17日最終日に基づき手配した航空券は18日現地発です。15日が最終日だと、16&17日の2日間が自力生存期間となります。もう驚かない。想定内。(幸い、選手は滞在先である選手村に帰国の日まで居られる&食事も出ることになりました。)
出発前にシラットの詳細な競技日程がわからないのは通常運転。出発前に判明することの少ない選手の滞在先が事前にわかっているのは〇。審判としての渡航であるcizmaの滞在先は公式通知と現地情報に違いがありますが、滞在先が「用意されている」のは確実ですし、現地につけばわかること&大体いつもそうなので、気にしない。
そんな感じで羽田からジャカルタへGo!です。
大会などシラット関係で渡航すると、最初のハードルは「送迎係との円滑な顔合わせ」です。観光なら自分で勝手に動けますが、迎えが来ていることが前提の場合、この送迎係と”会わない”といけません。そして、結構な確率でこの「送迎係と会う」のにcizmaは失敗します。あるいは、会えてもその後の流れがスムーズじゃなかったり・・・会えずに自力移動したこともあったなぁ。
そして、今回は驚きの超スムーズ対応。まず、飛行機を降りてわりとすぐのところに、一目で関係者(ボランティア)とわかる係員が名前の書かれたカードを持って待機していました。書かれた名前は3人分、cizmaの名前がないとか、選手の名前が間違ってるとか、あと2人が居ないね、とかは些細な話です。
係員と合流すると、入管前に設置された受付カウンターに案内されました。ここまではまあ、予想通り。何に驚いたって、受付カウンターがおざなりの机と椅子だけのボランティア待機所ではなく、きちんと「仕事」ができる状態になっていたことです。しかも選手はその場でIDカードが発行されました。審判は後程、審判用宿舎で競技団体の審判統括係から渡される、とのことでした。
そう、またもや現地情報の方が正しく、審判であるcizmaの宿泊先は選手とは別なのでした。今日到着した日本からのシラット組は審判であるcizmaと選手1名のみ。コーチは前日に到着していますから、空港から宿舎に送り届けるのは2名だけ。それぞれに1台用意するのはもったいない(&車が足りなくなる)ので、1台の車で選手村を経由して審判宿舎に向かうこととなりました。
2台の白バイに先導され、黒のキジャンは一般車両を脇に追いやりながら爆走します。空港からクマヨランの選手村まで20分程度だったでしょうか。選手村の完成時期は8月の本大会なので、現時点では周辺道路を含め、”工事中”感がありました。アジア大会後は低所得層向け住宅になるとのことですから、突貫・中抜きのない、真摯な作業を期待です。
選手村からシラット審判団宿泊先であるシラット実施会場(TMII)近くのSantikaホテルまでも、20分くらいだったかな。6時に空港に着陸して、ホテルに着いたのが8時くらいだったので、まあ大体そんな程度。
ホテルにはテスト・イベントのボランティアによるコンシェルジュデスクが用意されていました。早朝と言える時間帯の到着なので、全く期待していなかったのですが、早朝シフトのメンバーがちゃんと待機していました。そして驚愕の事実。ホテルのチェックインは14時!今、8時・・え、6時間あるじゃん。ホテルのロビーで6時間はツラい。
チェックインタイムばかりはどうしようもないので、トイレでラフな格好に着替え、ホテルから近い競技会場に行くことにしました。誰かいるかもしれないし、会場にはホテルが併設されているので、うまくいけばどこかの部屋で休めるかも、と淡い期待を抱いて・・・
結論から言えば、併設ホテルには潜り込めませんでした。それでも、知り合い数名に会うことができ、事務所で少し休ませてくれました。そんな感じで横になっていたら、実はインドネシア審判の数名が昨日からホテルに居るとの情報が。その中には懇意の女性審判もいます。それなら、そちらの部屋に潜り込ませてもらった方がいい。というわけで、ホテルに戻ったのが9時過ぎ。ホテルに着くと、ロビーに朝食を終えたと思われるインドネシア審判たちが集まっていました。挨拶もそこそこにミールクーポンを渡され、宿泊者でもないのに朝食バイキングに誘導されました。ユルさ、万歳。
お腹が満足したところで、部屋にお邪魔します。でもここも安住の地ではありませんでした。昨日からの滞在は今日からの滞在と管轄(財布)が違うらしく、一度チェックアウトをしないといけないそうです。チェックアウトは12時。それでも2時間以上はゆっくりできます。
チェックアウトした後、チェックインまでの2時間はモールで潰します。両替とかSIMカードとかいろいろとやることはあります。そして、14時半にロビーに集合、マイクロバスで移動し、会場でレクチャーがあるとアナウンスがされました。そして、チェックインしてみると一人一部屋でビックリ。通常、シラットの大会で審判に用意される部屋は2人一部屋、場合によっては3人一部屋だったりします。それが一人一部屋!なんでだろう?恐らく、OCA基準なんでしょう。でも、シラット審判団には大変不評。一人じゃ寂しい、と勝手に相部屋になってみたり、部屋に居ても話し相手がいなくてつまらん、と夜遅くまでロビーにたまってみたり、とワチャワチャ。気持ちはわかる。
さて、会場に到着してみたら開会式のリハーサル中でした。そう、行ったはいいけどすることがない、という意味不明な事態。
暇過ぎて、写真を撮るくらいしかすることがなかったです…
アジア大会に向けた施設の改修は、観客側のためのものだということに気づきました。トイレがきれいになってましたし、スロープが新設されていました。本番までには観客エリアに椅子が設置されるとも聞きました(テスト・イベント時点で完成させると本大会までに壊れてしまう、という見通しのため)
2時間ほど特にすることもなく会場で過ごし、ホテルに戻ったのは夕方。19時半にミーティング(顔合わせ)をするのでロビーに集合するように、と言われて解散です。夕食はミーティング前にホテルでいただきます。
顔合わせにはリストにあったラオス・ベトナム・タイの審判が来ていませんでした。タイは到着がもう少し夜遅くになる、とのことです。ラオスは病欠、ベトナムは旧正月との絡みで不参加との連絡があった、と。ベトナムはチーム(選手)も派遣していません。まあ、日本人だって年末の12月29〜31日に当たる時期に大会(それもテスト・イベント)だ、と言われては行く気がおきないってものです。
このミーティングで強調されたのは、このテスト・イベントの主目的は「運営の確認」である、という点。そのため、なにか不都合や気になった点があったら遠慮なく意見してほしいと言われました。要望が上がらなければ改善されないまま本大会となり、それでは開催国として満足のいく成功を望めません。また、アジア大会基準で行われるため大きな変更点がある、とのアナウンスもされました。
まず、審判の制服です。アジアオリンピック委員会の要望によれば、審判は「ジャケットにネクタイと靴の着用」が義務だそうです。採点員はそれでいいにしても、動き回るレフェリーはどうするのか、結論が出ていません。また、靴の着用はマットレス利用のシラットにとって頭の痛いところです。個人的には「ネクタイ・ジャケット」とはまた随分、西洋的でマチズモな思想だな、と思いました。(ヒジャーブにネクタイとかどうなの・・・)あと、マットレスに靴で上がることを決して良しとしなかった師匠を思うと、いくらマットレスを傷めないソフトシューズを採用すると言われても、心理的抵抗感は拭えません。とはいえ、今回のテスト・イベントでは「どのような形するか」の結論が出ておらず、従来通りの服装です。まあ、この先は決まったことに従うしかありませんが、オリンピック種目化を目指すのと何をトレードするかだな、と思います。
次に「ビデオ判定」が導入されます。これはテスト・イベントで試験運用されます。それがどのようなものかについては、また別の日に記述を譲ることにします。
試合場レイアウトの変更、新型機械への切り替え、ビデオ判定導入など今回のテスト・イベントには審判にとっての「初」が沢山あります。今日一日かけて、これらに馴染むことが求められます。
まず、レイアウト。試合のマットレスがステージのように持ち上げられました。またこれに伴い、採点員の位置が一段下がった状態になっています。さらに会場の広さの問題なのか、OCAの要請なのかはわかりませんが、審判の控え席がルールブックに規定された競技委員長席の後ろではなく、「別室」となっています。加えて設計時の想定とは異なるレイアウトのため、会場の動線が非常に制限されてしまい、この控室から競技場への審判入退場の動線が通常とは異なります。
通常はオレンジ線に沿って競技場2面それぞれの審判が動線を共有することなく、入退場を行います。今回は赤線に沿っての入退場です。競技場Bの審判たちにとっては入場が「逆」、競技場Aの審判たちにとっては退場が「逆」ルートとなります。退場が逆なのはまだしも、入場が逆だと規定された(慣れ親しんだ)入場時の列の並びが変更になってしまいます。幸い、cizmaは競技場Aに配属されたので並び順に混乱することはありませんでしたが、競技場Bの審判たちは「おい、先頭誰だ」「お前何番だ」ってなってました。
採点席が一段下がったのは、予想外にいいものでした。同じ面ではなくなったことで、なんかこうライブ感が薄れ、客観的な対象物感が増しました。端的に言えば、採点しやすくなりました。選手がステージから落ちる危険なレイアウトだ、との意見があったのは事実です。幸い、今大会でステージ外に放り投げられるような事態は起きませんでしたし、審判席に突っ込んでくる選手(たまに発生する)もいませんでした。ステージとして盛り上げてる素材(枠組み)の問題か、若干ボヨン、とした反発が出てしまっていたようですが、概ね良い方向への新レイアウトではないかと思います。審判が並び順で混乱してるのは慣れればいいだけですからね。
次に、新型機械。ボタン式からタッチパネルに変更になりました。タッチパネル式は去年のSEAゲームズと同じですが、SEAゲームズ開催国マレーシアが採用したのは分割式ノートパソコンでした。今回、インドネシアはタブレットを採用したようです。Windowsな、お中華タブレット。「タッチへの反応がよいので”ソフトタッチ”で使うように」と繰り返し注意されました。
スコアの計算システムもアップグレードされており、自動で勝者を計算してくれる仕組みになっていました。競技シラットは攻撃によって積み重ねた点数の多い方が勝者になります。同点の場合はペナルティのより少ない方、それでも同点なら高得点攻撃のより多い方(突きより蹴り、蹴りより倒しの方が高得点)が勝者となります。この判断もシステムがしてくれるとのことです。同点の際、試合後に採点内訳を確認してモタモタする必要がなくなりました。また、会場のスクリーンにも、その時点でどちらが勝者であるかがわかりやすく表示されます。観客やコーチは表示された数字を確認することなく、どちらのコーナーが優勢かを一目で判断できるようになりました。
そして最後の大改革(?)、ビデオ判定導入です。これはOCAの要請による大改革。そしてお金のかかる改革でもあります。システム構築にスクリーンの設置は当然。加えてリアルタイム録画をするための機材と人員、つまり、一つの試合面あたり3方向から録画するため3台のカメラと3人のカメラマン、2面ある今回は6台のカメラと6人のカメラマンが必要になります。聞いたところではビデオ判定を実施するのにかかる経費は、一日辺り100jt.ルピアだとか・・・テスト・イベントと本大会はいいにしても、今後の世界大会等で同じシステムを導入していくのは、どこかを削らないと予算的に厳しいかもしれません。どこを削るか、といえば恐らく審判の数でしょうね。今、5人で採点しているところが、3人もしくは2人に減るかもしれないと思いました。
ビデオ判定の流れは以下のとおりです。まず、それぞれのコーナーに2枚の抗議カードが渡されます。レフェリーの決定に不服を申し立てる場合、セコンドがこれを掲げます。レフェリーがそれを受け取り、競技委員長・審判長とともにビデオを確認し、申し立て内容を判断します。競技委員長・審判長・レフェリーがビデオを見て下した結論が最終的な結論となります。レフェリーの決定が覆ることもありますし、そのまま支持される(変更なし)こともあります。レフェリーの決定が覆った場合、これはつまり抗議(不服申し立て)が受け入れられたことになりますが、抗議カードは返却されません。抗議が通ろうが通るまいが、一度使用したカードは没収となります。1ゲームは2分3ラウンド。使いどころはセコンドの頭脳戦です。(写真は大会が始まってからのものになります)
結局、この日は一日会場に居ました。あ、途中、近くのモールに行ったんでした。金曜礼拝の日でもあったため、昼食休憩が長めに設定されていたのです。空き時間を使って、モールの洋裁屋さんにGOです。実は、午前中に支給された審判揃いのズボンが大きすぎました。大きくて途方に暮れたのはcizmaだけではなかったので、数名で。昼に出して夜には裾直し・腰回り詰めをやってくれるんですから、インドネシアさまさまです。日本じゃ絶対無理だわ。
いよいよ初日。でもその前に、コーチを集めて新システムの練習です。開会式は14時からなので、その前、午前がその時間に充てられました。昨日の組合せ抽選の場で新システムが周知されていたはずにもかかわらず、練習を始めてみれば「聞いてなかったでしょ」な行動がチラホラ。まあ、そんなもんです。それを見越しての練習ですし。
昨日、審判用のお弁当の到着が遅れに遅れたため、今日の昼食はホテルでいただきます。選手村は昼休みに往復できる距離ではありませんが、審判のホテルは会場から戻るのに10分もかからないのです。(会場に行くにはUターンポイントが遠いため15分ほどかかります。)
昼食を終え、審判服に着替えて会場入りすると、開会式を控えた会場は大賑わいでした。どうやら動員もかかっていたようで、大きな流派は座る場所が指定されていました。確認できた張り紙はKPS NUSANTARA、SETIA HATI、PERGURUAN TAPAK SUCI、PERISAI PUTIH、ASAD、MERPATI PUTIH、PUTRA BETAWI、PERISAI DIRI、SMI の9つ。他の流派ももちろんいたのですが、張り紙で座る場所を指定されるほどの団体様(大人数)ではなかったようです。
開会式が終わると、いよいよ試合開始です。今日はそれぞれのアリーナで2試合、どちらも採点に入りました。新システムの初実戦です。そしてしくじった(涙)
IT班からもアナウンスがあり、練習の時点でもわかっていたのですが、タブレットは反応がいい。軽く触るだけで点数が入ります。その前提で本番に臨んだところ、手元のタブレットに入れたはずの点数が表示されない事態に遭遇しました。あれ?と思い再度。それでも出ないので、再度。手を拭いて再度。つまり、最初の1回に加え、リトライを3回したことになります。しばらく待っても表示されず参ったなぁと思ったところ、ババババっとそれまで表示されなかった点数が一気に表示されました。どこかで渋滞していたかのようです。2点入れるだけのつもりが、2点が4回並んで8点追加になってしまいましたよ。しかも点数が入るような状況ではない時に。慌ててDELキー連打です。初日ですし、テスト・イベントということで殺気立った雰囲気もなかったのが幸いしましたが、恥ずかしいのなんの。
もう一つ、なにが起きたのかよくわかりませんが(だって触ったわけじゃない)、いきなり画面がブラックアウトしたこともありました。メモ用紙の準備がされていなかったので、この間、採点できず。原因は充電器の接続が甘かったのか、バッテリー残量が少ないがために勝手に省電力(スリープ)に入ったようでした。会場が殺気立ってないからいいものの、これが本大会で起こってたら、あるいは、緊迫したシーソーゲームでの出来事だったら、審判として詰む。
とはいえ、今大会の新システムは今までの中では一番、試合中断の少ないものでした。採点機械の不具合が少なく、インターフェースもわかりやすいため採点審判が戸惑う場面があまりなかったのもよかったのでしょう。
結局、テスト・イベントは試合数が実施日程の割には少なく、毎日夕方には予定が終了していました。そのため夜は基本的にフリー。今日の夜は昼から観戦に来ていた、姪っ子のような小さな友人と外食です。振り返ってみるとホテルに宿泊していた9日間、ここで夕食を食べたのは3回だけ・・・
イベント期間中、唯一の日曜日。動員をかけなくてもかなりの人数が観戦に来ていました。そういう意味では盛り上がった一日ですが、いかんせん、試合数が少ない。本日の予定は午前8試合、午後8試合。これを2面でやるので、cizmaにとっては午前4試合、午後4試合。はっきりいってユルユルのスケジュールです。
ではユルユルに試合をノンビリ観戦できたかといえば、そんなことはなく。前述のように、今回のイベントでは審判は控室に押し込まれました。控室にはお茶菓子とコーヒー、お茶が用意され、ユルスケジュールのために待機時間=お茶タイムもそれなりにあります。一試合終わったと思ったら、トイレに行く暇もなく再び呼び出される、そんな「いつもの大会」とは全く違った時間が流れています。しかしながら!残念なことに、当初「控室で待っている審判のために、モニターにライブ中継される」と説明されていたのですが、これが機能していない。観戦するには階段下から覗き見るしかなく、しかも立ち見。
次の試合で職務につく審判の名前もモニターに表示されるという話だったのですが、これも機能せず。結局、メモ用紙が回るという従来の手法で進んでいます。試合は見られない、いつ呼ばれるかわからない、でいつになくお茶菓子の減りが早い控室でした。(お茶する以外にすることない)
日程も後半になるとデータ送信のフローが確立したのか、審判の名前は表示されるようになりました。でも、試合の中継は決勝の最終日だけでしたね。
控室にはノートパソコンも設置され、本日の予定等が確認できるという話ではありました。が、結局誰も使わない。cizmaが使わなかったのは、マウスがなくてささっと作業ができなかったからです。他の審判はなんでかな・・・?まあ、当日の試合予定表がスマホに回って来てたから、ノートパソコンでいちいち作業するのが手間だったんだろう、と推察します。そういえば、控室に時計を置いてくれ、と初日にリクエストをかけたのに、最後まで登場しなかったのも残念です。アナログ時計万歳いまだに腕時計愛用者なので、スマホを取り出し電源を入れて時間を確認する、というのは面倒すぎます。(審判は腕時計や指輪類を外しています)
「いつもの大会」と違う点がさらにありました。それは、大会会場(敷地)に出店がないこと。正確にはいくつかの出店がありましたが、すべてアジア大会スポンサーのものです。通常、所せましとシラット用具や土産品を並べている地元の小売が全くありません。これはアジア大会ルールによるものなのだろう、と理解はできます。理解はできますが、少々つまらない。お土産が欲しいわけではありませんが、シラット用具を並べるお店や、使用許可を取ってるのか怪しい(十中八九取ってない)公式ロゴ入りTシャツとか見るのが楽しいのに・・・カキ・リマ的ワルンもなし。
FBでは「地元企業への圧迫だ」といったブーイングも出ていました。公式スポンサーはシラットに関係ないので、特に面白いブースでもなかったです。こういったテントしか出ていない(出せない)というのを事前に知らずに、いつもの大会のつもりで来た来場者は相当な肩すかしを食ったのではないかと思います。特に、ご飯ものが出ていないのは結構な誤算でしょう。そのため、近隣のワルンが大賑わい。さらに、試合会場出口付近で公式ロゴ入り非公式お土産キーホルダーを売ってる人(手売り)がいたのは、さすがインドネシア。どれくらい売れたのかな、アレ。
さて、8試合では夕方には全予定終了してしまいます。一旦ホテルに戻った後、日曜日ということで観戦に来てくれた友人親子と昨日から引き続き観戦していた小さな友人と初JCO。 夜は別の予定をこなし、戻ったのはなんと23時・・・普段の大会やイベントだったら考えられない時間の使い方でした。
どうやら、毎日、学校に観戦動員がかかっていたようです。正面スクリーンの下には日替わりで違う学校(恐らく中学生)が陣取っていました。おかげで平日でもそれなりに賑やか。
審判として現場に出る頻度は多いものの待ち時間は控室にいるため、隣のアリーナの試合はほぼ目に入りません。そのため、あまり印象に残った試合がない。それぞれのチームが全体的に試運転モードなのも、印象に残る試合が少なかった原因かもしれません。そんな中、この日は一つ感心した試合がありました。
男子インドネシア対シンガポール、差のあまりないシーソーゲーム。最終的には4-1でインドネシアの勝ちとなりました。潮目が変わったのは、シンガポールが警告1で5点をマイナスされてから。最終ラウンドで残り1分を切っていたところでしょうか。このマイナスがなければ、どちらに転がっていたかわかりません。そして、なにが感心するって、このマイナス5点は新規に導入されたビデオ判定を求めるセコンドからのカード提示システムによってもたらされたものだからです。
相手を捕まえたまま攻撃することは禁止事項であり、注意(マイナス1点)ではなく警告(マイナス5点)を与えられます。しかし、往々にして警告ではなく注意で済ませてしまうレフェリーが居るのも事実。これはこの禁止事項が数年前までは警告ではなく注意を与える禁止事項であったことが原因です。つい、昔のルールで動いてしまうベテランレフェリーがいるのです。この試合を取り仕切っていたのは、そういったベテラン審判。シンガポール選手の当該行為に対し、注意(マイナス1点)を与えます。
シーソーゲームでマイナス5点とマイナス1点は大きな違いです。これまでであれば、セコンドが大声を上げてアピールはするものの試合の流れが優先され、大概スルーされるものです。大体、セコンドの大声アピールで競技委員長が動く、という状況を作りだすわけにはいきません。しかし、今回はセコンドの手元には抗議のためのカードがあります。ここぞとばかりに、インドネシア側がこれを切りました。
抗議は「ビデオで確認してほしい」というものではなく、「あの違反事項はマイナス5点相当のはずだ」というもので、ビデオ判定導入の主目的とするところとは若干ずれます。それでも、お行儀よく試合中に抗議をすることを可能としたのが、今回の新システムです。おかげで、大声を張り上げ、時には競技委員長席に駆け寄り、さらには詰め寄る光景はなくなりました。(そういう光景があること自体が本来は異常)
繰り返しますが、抗議内容としてはビデオを見る必要はありません。既に注意を与えられているため、シンガポール選手の行為が”違反事項”である、との裁定は出ているのです。注意されたシンガポール側の抗議であればビデオ判定は必須=違反事項の有無を確認ですが、抗議はインドネシア側から。要はマイナスされるべき点数が違う、ということ。とはいえ、ビデオ判定を求めるための手順ですから、ルールに従い、皆でビデオを確認します。そして当然のこととして、「シンガポール選手は違反事項を行った。当該行為に対するペナルティはマイナス5点である」との最終結論が出されました。マイナス1点ではまだ若干、シンガポール優勢の点数だったのですが、この裁定で各採点審判の点差が開き、インドネシア優勢に切り替わりました。この組合せの試合において、攻撃で5点を取ろうと思うとかなりハードルが高い。セコンドはうまくカードを切ったな、というのが試合後の審判たちの感想です。あの残り時間で5点を取るのはほぼ不可能、これからのセコンドはああいう頭の使い方も必要だ云々。
将来的にはセコンドの抗議カードに対し、それが受け入れられなかった(抗議内容が最終結論に反映されなかった)場合のペナルティが検討されるかもしれません。ビデオ判定の手順をうまく使えば、選手が2,3分は休憩できますからね。時間稼ぎや試合の流れを変えるためだけに、言いがかりのような抗議をするケースが出ないとも限りません。ルールに適応し、その穴を探し、うまく使い、さらにそこを塞ぎ・・・ということの繰り返しです。
この日は昨日より少ない6試合(全体では12試合)。夜はまたもやフリータイム。今日は兄弟弟子と練習会です。
今日も午前6試合、午後6試合の全体で12試合なスカスカスケジュール。そんなスケジュールで脳みそが溶けたのか、午前の最後にやらかしてしまいました。
前述のとおり、審判のアリーナへの入退出は中央にある階段(ステップ)を上り下りして行われます。この時、cizmaは3番採点員。入場は最後尾、退出は先頭という位置です。なにをやらかしたって、退出時に階段を通り過ぎてそのまま直進してしまいました。なんかこう、まっすぐ戻ることしか考えてなかったんですよね。確かに視線の先には控室に続く通路があるのですが、その通路に行くためにはステップを降りないといけないことがすっぽり頭から抜けてました。そんな自分に後ろから声がかかりました。「おい、cizma、どこ行くんだ?」って。 その声で自分が階段を通り過ぎていたことに、やっと気づきます。もう、恥ずかしいったらないですね。慌てて引き返しました。
穴があったら入りたい。思い出すたびに赤面、恐らくずっといじられる・・・
爆死した以外は特にこれといったこともなく一日が終わりました。夜は再び、兄弟弟子と練習会。あ、そういえば、毎日発行されていた大会広報紙の本日分に記事が載ったのは、この日でした。別な意味でこっぱずかしい。明日はいよいよ日本選手の出番です。
今日は演武だけの一日です。試運転モードなものだから、トゥンガル(ソロ演武)以外は参加者が少ない、残念な状態です。(大会概要参照) 元々、演武部門は東南アジア諸国が参加者の多数を占めます。試合部門と異なり他競技からの引き抜き・コンバート・掛け持ちが難しいため、シラット新興国・後進国ではなかなか選手の育成ができないからです。そのため、世界大会でも演武部門は東南アジア諸国以外の参加者は少ないのが実情です。それに加え、あくまで今回はテスト・イベントであり本大会ではありません。それが理由でしょうか、東南アジア諸国も演武選手の派遣を見合わせた国が多かったようです。
cizmaは男子トゥンガル、男子ルグ(チーム演武)、女子ガンダ(ペア演武)、女子ルグの4種目で採点に入りました。そして、2008年から始めた審判歴の中で初めて、日本選手を採点するというシチュエーションに遭遇しました。過去、日本選手の演武を採点したことはありません。SEAゲームズには日本選手が居ません。また、世界大会では審判の国籍が多様なため、選手が当該種目に参加していない国の審判が採点にあたります。しかし、テスト・イベントの今回、それをするには単純に手駒(審判)が足りないのです。そのため、逆に選手が参加している国の審判に採点に当たらせる、という状態になりました。テスト・イベントは運営の試験であるとともに、本大会で召集する審判の見極めの場でもあります。贔屓するつもりは毛頭ありませんが、ちょっとしたプレッシャーです。それでも、「審判の誓約」に恥じない、中立公平を示す白い制服に見合う採点ができた、と思います。
この日のネタとしてはインドでしょうか。組合せ抽選の時点でエントリーしていなかったインドが、ルグに参加してきていたのです。そういえばほぼ毎日、ルグの練習をしている姿を見ていました。大会に来てるのにルグを勉強して帰るつもりなのか、熱心だなあ、と思っていたのですが、どうやらさにあらず。急遽、参加が決まったための詰め込み授業(?)だったようです。
恐らく、本大会で6人(組)未満のエントリーしかない種目は取止め(エキシビション)扱いになることに、運営側が危機感を抱いたのでしょう。東南アジア以外の参加者を作り出す作戦に出たのだと思われます。そして白羽の矢は、インド以外に立てようがなかったのでしょう。日本は1人しか選手がいません。キルギスタンは英語が通じない上、試合部門の選手しかいません。東南アジア諸国の選手は試合部門特化型です。これにひきかえ、インドは男女トゥンガルにエントリーしていますし、選手数も多く英語も通じます。男女どちらのルグチームもトゥンガルの選手を中心に、試合部門の選手2名を加えての参加となりました。
急遽の参加であるため、まず、服装がバラバラ。もちろん、全員、規定された道着を着用してはいるのですが、背中の国名刺繍が統一されていないのです。次に、動き。てんでバラバラ、というほどではありませんが、「共に動く」ことはほぼ、ない。他のメンバーを見て動きを確認しながら動いています。つまり、「覚えていない」ということ。結局、男女共に失格で終わりました。男子は途中で動作がわからなくなり、女子はタイムオーバー。
結果は失格ではありますが、3組のエントリーがあった男子ルグは銅メダル、2組のエントリーとなった女子ルグは銀メダル、という形で表彰式に参加していました。これは試合部門と同じです。決勝・準決勝で失格負けとなっても順位に変動はありませんので、メダルがもらえるのです。いきなり引っ張り出されたのは気の毒ですし、がんばったと思いますが、正直釈然としないものがありました。
ただ、どうやらこれは公式記録にはなっていないようです。帰国後に記録を確認したところ、インドネシアの金メダル数は10になっていました。女子ルグの金メダルはインドネシアで、これを加えたインドネシアの金メダル数は11個になります。しかし、記録上はこれがカウントされていません。また、シラットの国別メダル数でも、インドは銀メダルを獲得したことになっていませんでした。表彰式でもらったメダルは持ち帰れたのでしょうが、組合せ抽選をすっ飛ばしてのエントリーではエキシビション参加扱いだったのでしょうね。それならまあ、納得です。
参加者の少ない演武部門だけで終わった一日は、今までで一番早くホテルに戻ることができました。この日の夜は女子会。女子というか、女性審判だけでご飯&お買いもの。初めてメイソーに入りましたけど、もう日本と価格に差がないんですね。「日本は安い」と言われるのが、今更ながら腑に落ちました。
毎回思いますが、東南アジアで実施されるシラットの大会はどうしてこう、日程が長いんでしょう。でも、これも毎回のことですが、気づけばあっという間に最終日だったりするのです。全てが決勝戦、インドネシアのメダルラッシュが期待されるためか、平日にも関わらずかなりの人出でした。
自分がIDカードで出入りしていたので詳しくはわかりませんが、入場するためには身分証明書を提示し、バーコードのついた腕輪(新生児が着けてるようなあれ)を取得しなければいけなかったようです。観戦は無料ですが、この手続きのためにチケット窓口は相当混雑していました。
決勝の全10試合、これといって印象に残ったものがない・・・各チーム、殺気だってなかったからだと思います。とくに大番狂わせもなかったですし。覚えていることといえば、最終日のこの日になって審判控室で中継が見られるようになったこと。あと、表彰式の後ろのボードが気になったことでしょうか。
ポスターにもなっている図柄、単体ではかっこいいのです。ただ、表彰式というか、表彰台の後ろにある図としては、メダリストの後に「足」なんですよ、「足」。角度やポジションによっては、メダリストの頭の上に「足」。なんかこう・・・どうなの。cizmaの気にしすぎなんですけど。でもなあ、なんかなあ・・・
ともかく、昼過ぎには全ての予定が終わり、ホテルに戻りました。
夜は、いろいろとお世話になっているシラット関連アパレルCLATさんの宣材撮影でした。
近くに住むインドネシア審判の中には、既に今日のうちに帰宅した人もあり。撮影後に戻ったホテルには、少し寂しい感じがありました。と思ったら、逆に帰宅を取りやめて戻ってきたのが1名。行先はバンドゥンですが、長期休暇前夜の夜、雨、と悪条件が重なり、長距離バスの整理券番号があり得ない数字だったとのこと。バスターミナルでひたすらに待つよりも、部屋で一泊して明日、帰路に着く方が楽だ、と引き返してきたそうです。みせてもらった整理券は400番台でした。ないわー・・・
最終日の翌日にチェックアウトしなければいけないのだと思っていましたが、スケジュールが二転三転したためか、今日の夜も滞在できることになっていました。帰国便が18日のcizmaには渡りに船。もう一日、このホテルにお世話になります。でも、他の審判は昨日の午後から今日の昼にかけて、続々と帰宅していきます。昨日帰宅した近隣組と早朝便で帰国したメンバーが抜けた分、朝食の時点で既に半減。チェックアウトしていく審判たちと別れを惜しみながら、自分も友人の車で外出です。
同門の兄弟流派の練習場所に夜まで居ました。ホテルに戻ると、無人・・・正確にはボランティアのブースはまだありますし、ホテルの宿泊客・スタッフがいます。が、玄関やロビーに知った顔が一つもない状況は、寂しいものでした。
最後にチェックアウトするcizmaの退出をもって、ボランティアブースも解散となります。彼らは本大会でもボランティア登録をするそうですが、今回同様にシラット審判団担当になるかどうかは現時点ではわかりません。若い彼らとまたどこかで縁が繋がると楽しいなあ、と思います。そして、彼らが「日本好き!」ってキラキラとした目で言ってくれるのが眩しかった。このキラキラはアニメと漫画のおかげですが、二次元とリアルのギャップで「日本ないわー」ってならないことを切に願います。
ホテルを出て後は亡き師匠のお家にお邪魔しました。そのまま、そこで練習&一泊。
早朝便なので、暗いうちから家を出ます。それにしても、最近の空港は行くたびにウムロ団が居ますね。以前はなんかこう、そういう時期にしかいなかったように思うのですが、ここ2,3年は常に居る感じがします。やはりそれだけ豊かになったというか、余裕ができたというか、いわゆる「中間層」が増えたってことなんでしょう。願わくは、ウムロのやり方だけではなく、空港での過ごし方(列に並ぶとか、変なところで集団で立ち止まらないとか)も事前研修してくれるといいな、と思ったり思わなかったり。同じグループの人がいるからといって、後から列に合流するのは本当、やめてください。横入りの意識はないのでしょうが、それ、横入りです・・・お願い、並んで・・・イバダに行く人たちを見てイラつきたくないのよー。
今回は行きも帰りも椅子を3つ使えるという大ラッキー。横になって往復できるなんて、滅多にありません。基本的に機内はただひたすらに寝て過ごす派なので、横になれるのは本当、楽。
さて、振り返ってみると担当したアリーナAでは27試合が行われ、そのうち22試合で採点に入りました。審判の国籍に多様性がなかったため、5人いた非インドネシア審判は平均して20試合を採点しています。任命されるかどうかは五分だなあ、と思っていたレフェリー任務ですが、半分予想どおり、お鉢は回ってきませんでした。他の非インドネシア審判も1,2試合しかレフェリーを担当していませんから、順当ではあります。召集された審判の半数がインドネシア審判であり、彼らの様子を見るというのもあったのでしょう。8割の試合でインドネシア審判がレフェリーを務めました。
今回、召集されたことが本大会召集にどれくらい影響するのかは、わかりません。採点しかしていませんし、運営が「本大会に招集しても大丈夫」と判断したかどうか。あとは全体のバランスもあるでしょう。任命されれば名誉なことですが、任命されなかったとしても、それはそれ。審判とは別な形でアジア大会に関わることになるでしょう。どちらにせよ、日々の積み重ねの先にあるもの。今はまず、本大会に向けて意欲を燃やす選手のサポートがメインになります。ガンバレニッポン!