- 第3回プンチャック・シラット アジア選手権 -

 2017年9月22日から25日まで韓国の忠州で開催された第3回プンチャック・シラット アジア選手権に参加してきました。2017世界武術祭の一環としての開催だったため、武術祭も少し見物することができました。

第3回プンチャック・シラット アジア選手権概要
 (1)大会について
 (2)大会参加国
 (3)大会日程
 (4)競技種目
 (5)競技結果

大会こぼれ話・裏話
 9月21日(木):移動日
 9月22日(金):大会初日、会場はホテル
 9月23日(土):2日目、インドネシア組到着
 9月24日(日):決勝半分
 9月25日(月):最終日、メイン会場にて決勝
 9月26日(火):羽田着

第3回プンチャック・シラット アジア選手権(22~25th Sep. 2017)概要

第3回アジア選手権について

 第1回大会と第2回大会の間が5年も空いたにも関わらず、第2回大会の翌年開催の第3回大会である。1998年より毎年、忠州で開催されている世界武術祭の一環として行われた。運営の主体となったのは当然ながら韓国のシラット協会(SKPSF)であるが、大会運営ノウハウや審判などの主な人材は、アジア連盟のHQがあるシンガポールが提供していた。

 演武部門が実施されなかったため、前回大会よりこじんまりと印象であったが、初めて台湾からの参加があるシラットの国際大会となった。参加選手70名、試合総数55試合。前回同様、”アジア選手権”の看板を掲げる割には、少々物足りない。勝利せずともアジア3位を名乗れてしまう状況が出来ているのは残念だ。

 それでも、SEAゲームズ終了から日が浅いにも関わらず、東南アジア諸国が派遣した選手は一軍であったため、試合自体の見応えはあった。前回大会は控え・二軍が多かった。

試合会場

最終日会場

第3回アジア選手権参加国 (全7ヶ国)

 東アジア諸国(2) : 韓国(M9F1)、台湾(M6F3)
 東南アジア諸国(4) : インドネシア(M7F2)、シンガポール(M5)、フィリピン(M9F4)、ベトナム(M10F4)
 南アジア諸国(1) :インド(M6F4)

 *国名の後の()内には 数字=選手数、M=男子、F=女子。

第3回アジア選手権日程

 最終日以外は宿泊先ホテルのホールが試合会場であったため、移動する必要のない大会だった。

日付 イベント
21(木) 選手団到着、テクニカルミーティング・組合せ抽選
22(金) 開会式、試合部門準々決勝
23(土) 試合部門準決勝&決勝
24(日) 試合部門決勝 + アジア連盟会合
25(月) 試合部門決勝、表彰式、閉会式

競技種目

 プンチャック・シラットの試合には大きく分けて、体重別の階級で打ち合う試合部門と規定の型を競う演武部門とがある。今大会は演武部門の実施はなく、以下のクラスが競われた。

 
 1.男子試合部門(Tanding)
  Aクラス - 45kg以上50kg未満
  Bクラス - 50kg以上55kg未満
  Cクラス - 55kg以上60kg未満
  Dクラス - 60kg以上65kg未満
  Eクラス - 65kg以上70kg未満
  Fクラス - 70kg以上75kg未満
  Gクラス - 75kg以上80kg未満
  Hクラス - 80kg以上85kg未満
  Iクラス - 85kg以上90kg未満
  Jクラス - 90kg以上95kg未満
  Open - 85kg以上
 
 2.女子試合部門(Tanding)
  Aクラス - 45kg以上50kg未満
  Bクラス - 50kg以上55kg未満
  Cクラス - 55kg以上60kg未満
  Dクラス - 60kg以上65kg未満

競技結果

 MVPは男子3名(韓国2名、シンガポール1名)、女子1名(インドネシア)に贈られた。メダル獲得レースは1位ベトナム、2位インドネシア、3位韓国となった。金メダルの数だけを見れば、ベトナム8個、インドネシア4個、以下韓国・フィリピン・シンガポールが各1個獲得している。メダルレースは金メダルが同数であれば、それに続く銀メダル、銅メダルの数で順位を確定する。銀メダルの数は韓国とフィリピンが各2個。、シンガポールが1個。韓国とフィリピンの銅メダルの数を比較すると、フィリピンが9個、韓国が6個。つまり、本来であればメダル獲得レースの3位はフィリピンのはず・・・少人数で運営を回しているので、どこかでチェックミスが出たのだろう、とフィリピンは開催国の顔を立て、口をつぐむことにしたようだった。
 前回同様、最優秀審判賞も用意されていて、これはベトナムの審判に贈られた。

 種目の後の()はエントリー人数。4人以下のエントリーあるいは組合せ抽選の結果で即準決勝を引き当てた場合、3位決定戦を行わないシラットでは勝敗に関わらずメダル獲得となる。表のうち*がついているのは勝利なしのメダル

部門 種目 結果
男子試合 Aクラス(4) 1.フィリピン 2.シンガポール 3.インドネシア*、ベトナム*
Bクラス(3) 1.ベトナム 2.韓国* 3.フィリピン*
Cクラス(5) 1.ベトナム 2.インドネシア 3.フィリピン*、インド*
Dクラス(4) 1.ベトナム 2.台湾 3.フィリピン*、インド*
Eクラス(7) 1.インドネシア 2.フィリピン 3.インド*、韓国
Fクラス(7) 1.ベトナム 2.インドネシア 3.韓国*、シンガポール
Gクラス(7) 1.ベトナム 2.インドネシア 3.フィリピン、韓国
Hクラス(4) 1.ベトナム 2.韓国 3.台湾*、フィリピン*
Iクラス(4) 1.インドネシア 2.ベトナム 3.韓国*、フィリピン*
Jクラス(5) 1.シンガポール 2.ベトナム 3.韓国*、インド*
Open(2) 1.韓国 2.台湾*
女子試合 Aクラス(4) 1.ベトナム 2.フィリピン 3.インド*、韓国*
Bクラス(4) 1.ベトナム 2.インド 3.フィリピン*、台湾*
Cクラス(5) 1.インドネシア 2.ベトナム 3.フィリピン*、インド*
Dクラス(5) 1.インドネシア 2.ベトナム 3.フィリピン*、台湾*

大会こぼれ話・裏話

9月21日(木):移動日

 ほぼ一年ぶりの韓国行です。今回もLCC利用のため、行きは成田のJEJU、帰りは羽田のPeach。新幹線で京都行くより韓国行く方が安いんじゃなかろうか。でも近くて遠い韓国。物理的距離が近く、心理的距離が遠いという意味ではなく、待ち時間がありすぎて、事実として遠かった、という話です。
 まず、出発空港の成田T3にチェックイン2時間前到着を目指し、自宅を出たのが9時。特に遅れもなく韓国に到着したのが17時前。空港で待たされ、宿泊先のホテルに到着したのは22時半。ドアツードアで12時間かかってるよ・・・という一日を振り返ってみます。

 T3はシンプルですが機能的でいいですね。礼拝室も使い易いです。ただ、礼拝室に長居すると警備員さんが覗きに来るみたいです。礼拝の後、ついでに荷物整理していたら警備員さんが「ここ、礼拝室です」と注意しに来ました…あー、すみません。休憩室じゃないのはわかってます・・・
 ちょうどお昼時なので、フードコートで昼食も済ませます。ノーポークで探すとあまり選択肢がないのが残念。ピクトはわかりやすく出てましたけど。近くの席ではインドネシア人夫婦がコンビニでサトウのご飯を購入し、持ち込んだアボンでお昼にしてました。うどん屋さんとかノーポークのメニューがあるお店もありますが、一緒に豚料理も出てるので、そういうのがダメな人は食べられるものがないのですね。寿司屋はノーポークメニューしかないけど、生魚だから、人を選ぶ。(アボンは肉だから本来は持ち込みが制限?とか言ってはいけない)

 韓国に着いたはいいけど、指定されたミーティングポイントが分かりづらかった・・・出迎えの紙を持っていた送迎係の人が待機していた出口とは違うところから出てしまったらしく、ばっちり見落として素通りしてしまいました。こうも送迎係と一発で出会えることが少ないのは、自分に問題があるように思えてきました。
 係の人曰く、会場(忠州)行きのバスが出るのは18時半〜19時なので、18時過ぎに集合場所に居てください、とのこと。この時点で17時過ぎ、まだ1時間あります。近くのコーヒーショップで小腹を満たします。サンドイッチ類の字が読めません。まあ、ベーグルとクリームチーズなら問題ないでしょう。指定された時間に集合場所に戻りますが、全く出発する気配がありません。どうも中国からの到着組を待っている様子。結局、バスが出たのは19時半頃。
 成田空港に2時間、仁川空港に2時間。今日は計4時間、空港に居ます。そういえば仁川空港で意外だったのは、礼拝室がなかったこと。正確にはあるんですが、それは入管を入った後のエリア。自由に出入りできるエリアにない、というのは驚きです。

 バスは途中、SAで休憩を挟みます。バスを降りる時に戻り時間をイマイチ周知しきれず、10分の休憩が20分になってしまいました。車内で待ってる間に中国組がおやつをどうぞ、と分けてくれます。が・・・これ、干物の肉に見える。中国語のできる同行ボランティアに肉の正体を確認してもらったところ、案の定、豚さんでした。がっつかなくてよかったw
 22時頃、一度、レストランに停車します。シラット組はここでバスを乗り換える、とのことでした。しかしまさか、ご飯も食べずに乗り換えさせられるとは思わず、完全にくいっぱぐれです。ここから30分ほどの距離にあるホテルに行く途中、先着している知り合いの審判に「バスにいるcizmaとインド組はご飯食べてないよ!」とメッセージを送りまくり。返ってきた返事その1「レストランもう閉まってるよ」 その2「ボスに伝えたからそっちから返事いくよ!」 その3「レストラン閉まってるからインスタント麺作ってあげるよ」
 そして、その3氏からの続報「ゴメン、台所も閉まってる・・・」 いや、まあ、もしかしたらそういうこともあるかと思い、荷物の中にはフリーズドライのお味噌汁とかありますけど。えいようかんも2本ほど持ってますから、朝まで小腹を満たすことは可能ですが、テンションは落ちます。
 と、そんな凹んだ気分でホテルに到着しましたが、交渉して台所を開けてもらってくれました!卵を落としたマギーを作ってくれましたよ。ありがとう!そしてベジタリアンなインドチームには食パン。

 時差がないとはいえ、一日移動して疲労困憊。明日は7時にロビー集合、7時半にバス出発ということなので、早寝です。

9月22日(金):大会初日、会場はホテル

 7時半に会場に行くバスが出るということで、6時半には朝食のため食堂に下ります。食堂ではシンガポールチームに帯同してきたイブ2がムスリム向け朝食を用意してくれていました。大会期間中、彼女たちの料理の腕が存分に振るわれました。ムスリム向けに「なにをどうすればいいか」ホテルではわかりかねるので(間違えてもいやなのでしょう)、材料購入費は運営側が準備しますが、実務(?)はシンガポールに丸投げしたようです。イブ2の他、腕に覚えのあるコーチも台所に立っていました。マレー文化に男子厨房に入るべからず、なんてなくて本当に良かったです。

 ここで運営からアナウンスがありました。7時半に会場に行く予定でしたが、会場の設営が台風の影響で間に合わなかった、と。そのため、今日の試合はホテルの広間で行います、と。このホテルでは大会前に審判育成クラスが行われていました。その設備(マットレスなど)をそのまま流用すれば、大会設備として利用することは可能です。大会を行うにはスペースがギリギリなのが難ではありますが、致し方ありません。
 そして、移動がなくなったために開始時間の9時まで1時間ほど、自由時間ができてしまいました。朝だけど昼寝タイム。

 9時の試合開始前、さらにアナウンスがありました。対インドネシア戦は全て明日以降に持ち越す、とのこと。ええ、インドネシアチームがまだ到着していないんですね。どうもビザの発給で手間取ったらしく、予定通りの到着ができないそう。金曜の今日、ビザが本当に出るのか不安です。万が一、出なかったら大使館は土日の非営業日になってしまいます。まあ、出ると言ってるのだから出る&来るのを前提にスケジュールを組むしかありません。
 実はもう一か国、「来る」と言って来ていないチームがありました。それはネパール。来ると言って来ないことの多いネパールですが、毎回来ないわけではないので、その見極めが難しいところ。ただ、今回は選手一覧も送ってきていないそうで、運営は来ない前提で動いています。そして実際来なかった。

 昼休みを挟んで、午後の部は14時に開始です。
 午後の試合で目を引いたのは韓国対ベトナム。韓国選手がどうみてもマレーにルーツがある。ミックスなのか、帰化なのか・・・名前から判断するにミックス君かな?と思いましたが。恐らく対「韓国」ということでベトナム選手は侮っていたようです。1ラウンド目でジャトゥアンを何回か食らうと、目の色が変わりました。遠慮容赦のないモードに切り替わり、最後の3ラウンド目まで手を抜かず、ガンガンと重い蹴りをお見舞いしていきました。終わってみれば当然、ベトナムの圧勝。
 1ラウンド目でそれなりにベトナムと渡り合った韓国選手には驚きましたが、それ以上に驚いたのは、彼がマレーシア国籍だったってことかな! ミックスでも帰化でもなく、在韓マレーシア人でした・・・いいのか。まあ、この大会は韓国プンチャック・シラット連盟主催・アジアプンチャック・シラット連盟後援のアジア選手権であって、オリンピック委員会や世界プンチャック・シラット連盟が主催の規則ガチガチなものではないので、主催が認めればOKなんですね。それなら、在日の外国籍選手も参加できたことになります。もっと情報収集すればよかったなぁ。

 夕方16時には今日の予定が終了しました。夜はアジア選手権が軒を借りている世界武術祭の開会式です。
 滞在先の温泉地・水安堡から会場のある忠州世界武術公園までの車窓は、中央道との違いが分かりませんでした。瓦屋根に見慣れていると、異国感がないんでしょうかね。

バスの車窓
車窓

開会式待ち
開会式待ち

 開会式では、明日以降に実施される武術祭(フェスティバル)の参加者たちが演武を披露しました。武術ってなんなんだろうなあ、と思わないではいられません。動きだけをみれば、飛んだり跳ねたり殴ったり蹴ったりな系統(シラットはこれ)と組んで投げて抑え込んでな系統(柔道やレスリング)の2種。究極のところ、どちらを得意とするか、あるいはどのように演武するか、の細かい差異でしかないような。

 少し冷えてきた会場で、インドネシアチームに無事ビザが発給された、との知らせが入ります。韓国への到着は明日の朝9時、会場には13時頃やってくることでしょう。これで見応えのある試合が増えそうです。

9月23日(土):大会2日目、インドネシア組到着

 結局、本日の会場もホテルです。聞けば、最終日25日の決勝のみ、メイン会場で行うとか。そして最初の予定表ではフリーとなっている明日24日にも、今日の進行によって試合数は変動するものの、試合を行うことが通知されました。今日の進行、それは昼頃に到着予定のインドネシア組にかかっている・・・
 午前中は特にアクシデントもなく終わり、午後の部開始は14時、とアナウンスされました。インドネシア組の到着は13時の予定ですから、荷解きしたらすぐに試合ということになります。

 14時再開に合わせてホールに向かったところ、開始時間が15時になったと告げられます。インドネシア組の到着が少し遅れたための措置でした。彼らが到着したのは13時半でしたし、昨日からのリスケもあり、午後の第一試合はベトナム対インドネシアです。開始を遅らせるのはやむをえないでしょう。

 午後の部で一番印象に残ってるのは、女子のインド対インドネシア。インドチームは選手の実力にばらつきが大きく、東南アジア勢とそれなりに渡り合う選手から、新興国台湾に苦戦する選手まで様々。この試合のインド選手は、残念ながら見るからに後者。どうなることかと思いきや、1ラウンド目でインドネシア選手の蹴りがかなりいい音で決まった瞬間、インド選手は悲鳴を上げて倒れてしまいました。パニックで過呼吸を起こしかけています。茫然とするインドネシア選手。会場も一瞬フリーズです。ジュニア選手で目に涙を溜めてがんばっちゃうような子は見たことありますが、悲鳴を上げて倒れる成人選手は今まで誰も見たことないんじゃないかな・・・いやーびっくり。
 ルールに則ってお医者さんが診察に入り、試合続行の可否を判断します。そして驚くことに、最初の判断は「可」でした。いや、あの、過呼吸起こしかけてますが?身体的に怪我はないにしても、精神的に続行不可能でしょう。そして、最終的にドクターストップでインドネシア選手のTKO勝利となりました。

 正直、初日から変なお医者さんだなあ、と思っていたのです。選手に触る際に手袋をしませんし、足の痛みを訴えているのに触診しているのは手や腕。スポーツの場での応急措置や試合続行可否の判断に慣れている様子がありません。が、それもむべなるかな。スポーツドクターではなく、鍼灸医でした。お医者さんであることに変わりはないし、鍼灸には鍼灸の効能があるのは事実ですが、競技大会の医療班としてはどうなの・・・それとも韓国では鍼灸医がスタンダードなんでしょうか。
 ちなみに、鍼灸医だとわかってからの彼は、東南アジア組に大人気でした。慢性痛を見てもらおうとする選手、不具合を訴えるコーチ、と皆さん針を刺されまくってました。頭に針を並べていた某国チームマネージャーには笑わせてもらいましたw

 夜ごはんの1時間を挟み、今日は夜の部もあります。今日どれくらい消化できるかで、明日の予定が変わってきます。夜の部で覚えているのはまたもや、女子のインド対インドネシア&お医者さん。
 こちらのインドネシア選手はSEAゲームズの銀メダリスト。対するインド選手、見たところ全くイケる感じがしません。なんとびっくり、開始20秒、蹴り1発で終了しました。悲鳴を上げて倒れるということはありませんでしたが、完全に戦意喪失。インドネシア選手にとっては、超省エネ試合。
 お医者さんが絡んだのはインドネシア対韓国。体重別でクラスを分けるので、場合によっては体格(身長)に差が出ます。この試合では韓国選手が長身細身、インドネシア選手と頭1つは身長差がありました。 背の高い選手が背の低い選手からジャトゥアンを食らうと、勢いがついたバランスとテコの原理(?)なのか頭から落ちることが多いのです。うまい選手同士だと受身も取れるのですが、韓国選手はわりとがっつり、マットレスに叩きつけられてしまいました。幸い大事には至りませんでしたが、フラフラしてすぐに起き上がることはできません。そしてお医者さんの下した判断は「続行可能」 えー・・・?どこのブラック部活ですか。確かに本人は続行したがってるし、手足も普通に動かせてるようですが、頭の揺れを甘く見ちゃだめです。ふらつきは立派な脳震盪を疑う所見の一つのはず。結局、競技委員長と大会委員長がお医者さんに指示を出し、「続行不可」の結論に変更となりました。世界大会やSEAゲームズでこのようなこと(医師の判断を運営側の指導で変更)が起きたら大問題ですが、今大会はそこまでのシビアさは求められていません。まあ、だからこそ鍼灸医が医療班なのでしょう。

 最後の試合が終わったのは22時半。明日は準決勝1試合+決勝6試合が行われます。最終日にメイン会場で行われる決勝は9試合の予定です。

9月24日(日):決勝半分

 今日は午前中に7試合を実施します。午後にアジア連盟の会合を行い、夕方にはメイン会場で明日のリハーサルの予定です。
 7試合のうち、最初の試合は女子フィリピン対インドネシア。このインドネシア選手は昨日の最終試合を20秒で終わらせた子です。さすがにフィリピン相手にそうはいかず、かなりの熱戦でしたが、インドネシアの勝ち。そして本日の最終試合はこのインドネシア選手対ベトナム。つまり、彼女は昨日の夜中にインドネシアを出発し、昼に会場に到着、夜の22時過ぎに試合をし(20秒だけど)、翌朝10時と12時に試合をしていることになります。しかもベトナムに勝つというね・・・体力無尽蔵。

 アジア連盟の会合は予定通りの時間に始まり、ほぼ予定通りの時間に終わりました。15時半にはシラット組全員がメイン会場に向かいます。会場では、明日の流れが説明されました。まあ、どこに試合場が設営され、表彰式はどこで行う、とかそういう話です。

説明聞いてます
説明待ち

 あとは20時半に帰りのバスが出るまで自由時間です。うーん・・・4時間近くある。とりあえず、敷地内にある「世界武術博物館」を見学することにします。まあ、なんというか、過去に世界武術祭に参加したグループからの贈り物陳列館的な感じでした。各武術の武器や道着もあるんですが、明らかに直接は「武」と関係ないものもチラホラ。シラット関係の陳列物もいくつかありましたが、多くはインドネシアではなくマレーシアによる寄贈であることが見て取れます。

シラット関係寄贈品その1:衣装
寄贈品その1

シラット関係寄贈品その2:頭巾?
寄贈品その2

シラット関係寄贈品その3:Golok(剣)
寄贈品その2

 一通り見終わってもまだまだバスが出る時間ではありません。世界武術祭はお祭りなので、なにやら屋台も沢山出ています。が・・・残念なことに手持ちのウォンがほとんどない。念のために成田で両替した10000ウォン(約千円)のみ。しかもハングル読めない、英語通じない、当然、インドネシア語はわかってもらえない。夕方になり小腹も空いてきましたが、市販品(売店のお菓子類)に手を出す割り切りもできず。これで豚由来入ってたとしても完全不可抗力、と甘栗を5000ウォンで購入しました。

多分食べられる伝統菓子っぽいなにか
米菓子

本場の味の予感
たこ焼き

 そうこうしているうちに雨がちらついて来たので、屋根のある舞台前の椅子に避難です。ここで行われているのは、世界武術祭の目玉の一つ、武術コンテスト。途中で(シラットの)運営からお弁当が配られ、食べながらの観戦となりました。舞台のディスプレイに国名や武術名、その説明が表示されるのですが、ハングルオンリーでどれがなんだったのか、イマイチわからないまま過ぎていくのが残念です。それでも、シンガポールが派遣したシラットの子たちが優勝したのはわかりました。オメ。

 指定どおり20時半にバスに乗りましたが、出発したのは21時半近く。皆、時間を守ろう。明日は最終日、7時にはホテルを出発です。

9月25日(月):最終日、メイン会場で決勝

 最終日、今まで一番の早起きです。7時にホテルを出発する上、cizmaは今日の夜便で帰国のため、チェックアウトもしなければいけません。つまり、荷物をまとめなければならないのです。昨夜のうちに8割方済ませてるとはいえ、戻ってくる予定ではなく出かけるには準備に時間がかかります。

 会場に到着すると試合場のマットレスは設置済みでしたが、観客席は昨夜のまま。昨夜のまま、というよりはぐちゃぐちゃでゴミだらけ・・・仕方ないので、選手より先に到着していた審判数人で椅子の整理整頓、ゴミの片付けを始めます。全員でやればもっと早く済んだと思うけど、動くか動かないかは人それぞれ。動きたくても動けない人もいますし、まあ、よし。じわっと汗をかくくらいに一仕事を終えかけたころ、選手団も到着しました。働いてる審判を見て手を貸してくれた選手団もあり、そうでないのもあり。そろそろ終わりかけでしたし、選手は片付けではなく試合が本分ですから、まあ、これもよし。
 ある程度、納得のいくくらいに片付けが終わり、環境が整ったところで本日の試合、決勝戦9試合が始まります。そして、ここで審判の人手不足が判明しました。今日は平日の月曜日。どうも一部の韓国審判は出勤するようです。しかも、最終日ということで武術祭のVIPを迎える業務に駆り出された韓国審判もいるようで、一気に6人抜けました。残りのシンガポール、フィリピン、インド、日本の9人で回さなければなりません。これはさすがにバランスが悪い、ということで韓国審判を一人、審判業務に戻してもらいます。それでも10人で回すため、一試合終わったと思ったら、また次でも採点、と休む間もなく審判業務が続きました。

 試合が終わったら、今度は表彰式です。旗の実物は上がりませんでしたが、ディスプレイに表示されます。
 昨日の時点ではインドネシアとベトナム、どちらが総合一位になるかわかりませんでした。それが今日のインドネシア対ベトナムではインドネシアがほとんど勝てず、最終的にベトナムが15種目中9種目で優勝。インドネシアは4種目での優勝ですから、15回のうち2回しか、ベトナム・インドネシア”以外”の国歌が流れていないのです。シラットの国際大会に何度も参加していると、ベトナム国歌を覚えられます。

レアな印尼・越以外その1:新加波
シンガポール

レアな印尼・越以外その2:韓国
韓国

 イベント終了後、バスターミナルから空港バスで帰路につきます。

日本の田舎のような車窓
車窓

 到着時の公共エリアに礼拝室なしは意外でしたが、帰りはラッピングサービスがないことに気づき、これもまた意外に思いました。行きは機内に持ち込んだトランクを預けるために探したのですが、存在しません。どうも、保安上の理由のようです。荷物をチェックインカウンターで預けた後、「再検査の場合はお呼び出ししますので、5分くらいはカウンター近辺でお待ちください」と言われました。裏で開けてるんですかね。幸い、呼び出されることもなく、出国エリアへ。
 24時間空港とはいえ、全てが24時間ではないようで、既に20時近く、営業時間(?)が終わって閉鎖されているゲートがあります。そのため開いているゲートが混雑してきており、カウンターではゲートを通過し待合室まで40分ほどかかる、と警告されました。さすがに40分はかかりませんでしたが、混んでいたのは事実。免税のお店なんかも21時で閉まるところが多いようです。そして仁川空港は相変わらず、広い。広すぎるよ!ゲートが遠いったらないわー

 帰国便は羽田着のPEACH航空、遅延もなく出発です。

9月26日(火):羽田着

 2時間半のフライトで、到着したら日付変わってました。海路郎さんにお迎えを頼んでいるので帰宅できます。まだ何本か高速バスはあるようですが、お迎えない人はどうやって帰るんだろう・・・?

 SEAゲームズでレフェリーを務めることはありませんでしたが、今回は女子14試合のうち5試合でレフェリーを任されました。女子審判6名のうち、風邪で声が出ないということでレフェリーを辞退した1名を除いた5名のなかで、稼働率は8試合でレフェリーを務めたベトナム審判に続いて2番目になります。55試合中26試合で採点も行いましたので、30試合に絡んだことになります。
 ちなみに、前述のベトナム審判は男子の試合も任されていましたが、cizmaは女子の試合のみ。できるだけ同性の審判が同性の試合を裁くのが競技シラットの原則です。が、これは元々、異性間の接触を好まないムスリムが多いことから出てきたルール。審判の男女比、男女の試合数などから実際はこの限りではありません。レフェリーの配分(任命)を行う審判部は、選手の背景・力量、審判の背景・力量を総合的に判断して、担当者を決定しています。今回、数試合のレフェリーを任されたこと、その後の会話でもcizmaにレフェリーとして一定のレベルに達していると認識されているのがわかり、少し自信になりました。男子の試合を任されなかったのは、力量不足だからか、cizmaがジルバブさんだから気を使ったのかは不明です。でも、前者の気がします。男子も任されるようになれば、国の威信をかけたシビアな大会でもレフェリーを任されるようになるかしら・・・がんばろう。