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- 第16回プンチャック・シラット世界大会 + α -
2015年1月7日から17日までタイのプーケットで開催された第16回プンチャック・シラット世界大会とそれに先立って行われた審判昇級講習に参加してきました。公式発表では参加国37の過去最大規模の大会とのことですが…はてさて。
恒例の(?)大会記録をメインに旅行記をば。
第16回プンチャック・シラット世界大会概要
(1)大会について
(2)大会参加国
(3)大会日程
(4)競技種目
(5)競技結果
大会こぼれ話・裏話
1月5日(月):ジャカルタからプーケットへ
1月6日(火):プーケット到着、講座開講式
1月7日(水):審判昇級講座1、チーム到着
1月8日(木):審判昇級講座2
1月9日(金):審判昇級試験、歓迎夕食会
1月10日(土):開会式、VIP試合と演武部門予選
1月11日(日):演武部門決勝、試合開始
1月12日(月):試合試合試合
1月13日(火):今日も試合
1月14日(水):午後から決勝
1月15日(木):オフ日
1月16日(金):決勝と閉会とさよならパーティ
1月17日(土):シンガポール経由で帰国へ
1月18日(日):3週間ぶりの日本
第16回プンチャック・シラット世界大会(7~17th Jan. 2015)概要
2012年の第15回大会に引き続き、再びタイが開催国です。こじんまりとした前回大会に比べ、今回はテレビ局と組んで大規模なセットが設置されたり、大会マスコットの着ぐるみが登場したり、とタイにおける競技普及率を考えると不釣り合いなまでのお金のかかりっぷり。2018年のアジア大会@インドネシアを見据えた「広報」の場でもあったと思われる。
参加国数は開会式のスピーチによれば37、開会式で入場行進した旗は34、実際の選手団数は23。…これは前回大会の最終報告書による25か国より参加国数が減少している。前回大会ですら前々回大会より参加国数を減らしていたというのに。
SEAゲームズで好成績を残したミャンマーが欠席。時期が合わないのか、開催期間が長すぎるのか、常連のスイス、オーストリア、スリナムも欠席。代わりに中央アジア・西アジアの国からの参加が目についた。また、東南アジア勢以外の演武部門参加も過去になく多い大会だった。
ヨーロッパ諸国(7) : ベルギー(4)、フランス(4,T:M&F)、オランダ(7)、ロシア(3)、イギリス(2)、スペイン(1,TGR:M)、ウクライナ(2)、
東南アジア諸国(7) :
インドネシア(17,TGR:M&F)、マレーシア(18,TGR:M&F)、フィリピン(13,T:M&F)、シンガポール(15,TGR:M&F)、タイ(17,TGR:M&F)、ベトナム(18,TGR:M&F)、ブルネイ(4,TR:M&F,
G:M)
アジア諸国(7) :トルクメニスタン(1)、パキスタン(2)、カザフスタン(3)、 ウズベキスタン(6)、ネパール(7)、インド(2)、日本(2,T:F)
その他(2) : オーストラリア(2,T:M&F, G:M)、米(1,T:M&F)、
*国名の後の()内には 数字=試合部門選手数、T=ソロ演武Tunggal、G=ダブルス演武Ganda、R=チーム演武Regu、M=男子、F=女子 を記載してある。試合と演武にWエントリーしている選手も居るので、トータルした場合の参加者数は延べ人数となる。
**公式では参加国数37ヶ国。これは事前に参加登録あるいは審判のみを派遣した国もカウントに入れている。本表では選手を派遣した国を参加国とした。
今大会では珍しくも事前にスケジュールが発表されていた。大枠はそれに則って運営されたものの、完全にその通り、というわけでもなく。参加選手数が当初登録時点より減少したからか、実際には夜の部がほとんど行われなかった。
基本的な行動パターンは・・・
6:30-8:00 朝食
8:30 ミーティングルーム集合、ブリーフィングの後、会場へ
10:00-12:00 午前の部開始(予定)
12:00-14:00 昼食
14:00-18:00 午後の部開始(予定)
夕食、就寝
審判団は宿泊先が3箇所に分散していた。原則、審判団の宿泊先は1か所に集約されるが、同一ホテルに部屋の空きが足りなかったようだ。(8割方は同一ホテルに宿泊) 審判、選手団、VIPともに宿泊先は車で10分弱の距離のため、朝食以外は会場で提供された。
日付 | イベント |
7(水) | 選手団到着 |
8(木) | 選手登録、テクニカルミーティング・組合抽選 |
9(金) | 歓迎夕食会 |
10(土) | 開会式、特別第1試合、演武部門予選 |
11(日) | 演武部門決勝 |
12(月) | 試合部門1回戦 |
13(火) | 試合部門2回戦&準々決勝 |
14(水) | 試合部門準決勝&決勝 |
15(木) | オフ |
16(金) | 試合部門決勝、閉会式 |
プンチャック・シラットの試合には大きく分けて、体重別の階級で打ち合う試合部門と規定の型を競う演武部門とがある。今大会では以下のクラス/型でそれぞれの技が競われた。黄色は日本選手が参加したクラス。
1.男子試合部門(Tanding) Aクラス - 45kg以上50kg未満 Bクラス - 50kg以上55kg未満 Cクラス - 55kg以上60kg未満 Dクラス - 60kg以上65kg未満 Eクラス - 65kg以上70kg未満 Fクラス - 70kg以上75kg未満 Gクラス - 75kg以上80kg未満 Hクラス - 80kg以上85kg未満 Iクラス - 85kg以上90kg未満 Jクラス - 90kg以上95kg未満 Open - 85kg以上 |
2.女子試合部門(Tanding) Aクラス - 45kg以上50kg未満 Bクラス - 50kg以上55kg未満 Cクラス - 55kg以上60kg未満 Dクラス - 60kg以上65kg未満 Eクラス - 65kg以上70kg未満 Fクラス - 70kg以上75kg未満 Open - 65kg以上 |
3.男子演武部門(Seni) Tunggal (ソロ) Ganda (ダブルス) Regu (3人チーム) |
4.女子演武部門(Seni) Tunggal (ソロ) Ganda (ダブルス) Regu (3人チーム) |
男子MVPはタイ、女子MVPはインドネシアの選手が獲得した。なぜか今大会では最優秀コーチと最優秀審判への賞が用意され、コーチはオランダ、審判はインドネシアが表彰された。演武貯金を一つ減らしたが、試合部門での勝利を前回大会から一つ増やし、結局、前回同様の総数9個を獲得したインドネシアが最多金メダル獲得国となった。次点のベトナムは試合部門6演武部門1で総数7。開催地のタイは試合部門で金4を獲得するという強さを見せた。
表彰式を全て確認していたわけではないので、試合部門の3位が不明なクラスがいくつかある。(Facebookでインドネシアの審判仲間が結果の一覧をUPしていたので、それを見ながら穴埋め) 結果が一覧できる報告書でも配布してくれればいいんですけど。演武部門は通常、3位は1か国のみだが、今大会では諸事情により銅メダルが乱発された。主催者は予備のメダルを使い尽くしたのではないかと思われる。(諸事情に関しては本文にて・・・?)
部門 | 種目 | 結果 |
男子試合 | Aクラス | 1.インドネシア 2.マレーシア 3.タイ、シンガポール |
Bクラス | 1.タイ 2.インドネシア 3.フランス、マレーシア | |
Cクラス | 1.ベトナム 2.マレーシア 3.オーストラリア、タイ | |
Dクラス | 1.タイ 2.マレーシア 3.ブルネイ、インドネシア | |
Eクラス | 1.マレーシア 2.インドネシア 3.ベトナム、オランダ | |
Fクラス | 1.ベトナム 2.マレーシア 3.オランダ、タイ | |
Gクラス | 1.ベトナム 2.フィリピン 3.パキスタン、マレーシア | |
Hクラス | 1.タイ 2.インドネシア 3.ベトナム、シンガポール | |
Iクラス | 1.ベトナム 2.インドネシア 3.オランダ、マレーシア | |
Jクラス | 1.シンガポール 2.ベトナム 3.マレーシア、インドネシア | |
Open | 1.ベトナム 2.イギリス 3.マレーシア、オランダ | |
女子試合 | Aクラス | 1.タイ 2.インドネシア 3.シンガポール、マレーシア |
Bクラス | 1.マレーシア 2.ベトナム 3.インドネシア、カザフスタン | |
Cクラス | 1.インドネシア 2.ベトナム 3.マレーシア、タイ | |
Dクラス | 1.インドネシア 2.シンガポール 3.ベトナム、マレーシア | |
Eクラス | 1.マレーシア 2.タイ 3.ベトナム、フィリピン | |
Fクラス | 1.インドネシア 2.ベトナム 3.オランダ、シンガポール | |
Open | 1.ベトナム 2.インドネシア 3.マレーシア | |
男子演武 | Tunggal | 1. インドネシア 2. シンガポール 3.ベトナム(&タイ) |
Ganda | 1. インドネシア 2. シンガポール 3. マレーシア | |
Regu | 1. インドネシア 2. ベトナム 3. マレーシア(&シンガポール) | |
女子演武 | Tunggal | 1. ベトナム 2. インドネシア 3. タイ |
Ganda | 1. インドネシア 2. ベトナム 3. マレーシア(&シンガポール) | |
Regu | 1. インドネシア 2. ベトナム 3. マレーシア(&シンガポール) |
大会こぼれ話・裏話
せっかく遠路はるばる東南アジアまで出かけるので、世界大会前にインドネシアに立ち寄ります。インドネシア滞在はバンドゥンに6日、ジャカルタに3日。この部分は特に旅行記のネタとなるようなことも…あったかな。思いだしたらおまけ程度に書くとして、大会に絡めたこの旅行記はジャカルタからプーケットに向かうところから始めます。
cizmaは世界大会前に開催される国際審判昇格(upgrading)講座に参加するため、チームより一足早くプーケット入りしなければなりません。チーム(大会参加者)は7日、講座参加者は6日のプーケット到着が主催者により求められています。6日のジャカルタ発早朝便を使っても、講座日程に間に合うようにプーケットに到着できますが、この選択肢は却下。以前、同じ早朝便を使って日本に戻ったことがありますが、JKT発第一便となるため空港は開いてないし、夜明け前に空港に向かうため睡眠時間が中途半端になりました。あまりいい思いをしていませんので、今回は夜にジャカルタを出発、KLの空港で夜明かしする方を選びました。
空港に着いてみると、なんとウムロに向かう一団とかちあってしまいました…小巡礼に行くのが初海外、お上りさんと言った風情で揃いの洋服に身を包み、揃いの鞄と身分証を首から下げたなおじさんおばさんの集団があちらこちらに発生して、これは嫌な予感がします。
イミグレで嫌な感じ的中。通常はインドネシア国籍と外国籍で分けられている入管ですが、あまりの人数の多さ(と偏り)のために一緒くたにされています。外国籍用カウンターにインドネシア人の集団…並べ。マジ並んで欲しい、あと、どの列に並んでるのかはっきりさせて、お願い。隣が空いたからって移動してこないで。そこは空いたんじゃなくて、後ろの人が進むスペースなの。並び慣れてないのはわかる。がしかし、ウムロという人生の一大信仰行為をしに行こうというのだから、世俗社会のマナーも是非守っていただきたい。横入りされたら黙ってないよ!
KLに着いたのは5日深夜、プーケット行は6日早朝。乗換時間が5時間のKLで、鞄を枕に長ベンチで一休み。寝過ごすのが怖かったけど、なんかちゃんと寝れた。意外だったのは、ジャカルタ発KL行の機体よりも、KL発プーケット行の機体がきれいだったこと。新しい機体で、エンタメ設備の画面画素数が高かった。プーケット行はドル箱なのか、競争が激しいのか・・?
プーケット空港に着いた時間帯はまだ夜明け前。プーケットに関してなにも調べずに渡航したため、中国人の一団につられてついVOAの列に並んでしまった。インドネシアではVOAに並ぶのが当然なので、なんとなく並んだけれど、タイってビザ要らないんじゃ。ちょうど係員がcizmaの前に並んだコーカソイドに近づいて、「どこのパスポートだ」と聞いています。当然ながらVOAは全外国人対象ではないようです。彼らはVOA免除、cizmaも彼にパスポートを見せたところ、イミグレカウンターを指さされました。あ、やっぱりビザ要らないのね(苦笑)
イミグレに並んでまた一悶着。なにも調べてない自分が悪いのですが、宿泊先がわからない。適当なホテルの名前を書こうにも、プーケット情報がなにもない。出入国カードの宿泊先が空欄では入国できないようです。やり取りの末、メールアドレスを書くことで解放されました。さて、後は荷物を引き取って迎えの人と会うばかり。って…荷物出てこないんですけど。トランクは出てきたんですが、小ぶりの荷物(A4サイズくらい)が待てど暮らせど気配なし。小さすぎてKLで積み込みを忘れられたっぽい。荷物センターに行くものの、連絡先が分からないのがここでも問題になりました。荷物自体は次の便でプーケットには到着するようですが、持ち主(cizma)がプーケットのどこにいるのかわからなくては届けようがない、というね。とりあえず宿泊先が判明したら、荷物センターに電話するということになりました。
さて、今度こそ迎えの人と会えれば後は万事解決…って迎えがいないんですけど。経験上、迎えとスムーズに会えることの方が珍しいので、あまり驚きはしません。待ってる間、空港警備員にマレー語で「ムスリム?」って感じに話しかけられました。彼もムスリムなのでしょうが、プーケットのマレー語はインドネシア耳には訛りがきつくて何を言ってるのかイマイチわからなかった。ごめんね。それにしても迎えが来ないなあ、と周りを見渡せば、どうもcizmaが居るエリアはまだ「空港内」だったようです。入管を過ぎ、荷物も受けとり、税関も通ったので、てっきり外に出たものと思っていましたが、アジアにありがちな「送迎者は中に入るべからず」エリアにいたようです。ふと屋外を見れば、名前を書いた紙を持ってる人が何人か中の様子を窺いながら立っています。
外に出て自分の名前を発見した安堵感。ホテルの名前さえわかっていれば、迎えと会えなくても自力移動が可能ですが、行先不明ではどうしようもない。ちょっと今回は準備不足でした。送迎係の車に乗り、夜明け前のプーケットを走ること30分強、到着したホテルで「一人部屋だ」と告げられます。通常、審判は2人で一部屋です。なんかおかしい、と大会関係者の宿泊先リストを見せてもらったところ、名簿に載ってるのはVIPのみ。そう、連れて行かれたのはVIP滞在用ホテルだったのです。ええ、一応cizmaは会長職を務めさせていただいていますのでVIPとして「も」登録されているのでしょうけれど、なんのために6日なんて前乗り状態かといえば審判講習参加のためなんです。講習参加者の宿泊先に連れて行ってくださいよ…ドライバーさんの携帯を借りて朝っぱらから大会事務局とヤイヤイ。結局、とりあえずこのホテルにチェックインして一休みし、8時にホテル移動のために別な人が迎えに来るということになりました。現時点で朝の6時、日の出前。
一休みして8時ちょっと前にロビーに降ります。予想どおり、送迎と思しき人はいません。8時半くらいまで待ちましたが、気配なし。忍耐力ないのでこれ以上待つのもつらい。もう、自力移動です。ホテルのドアボーイに行先を告げたところ、徒歩5分だと言われます。いやでもね、大きなトランクとかあるのよ。車で移動させてください。荷物を見たドアボーイ、ホテルの送迎車を用意してくれました。ありがとう。
講習参加者が泊まるホテルに着いてみれば、ちょうどタイの審判団がチェックインしているところでした。これはありがたい。顔見知りの彼らのタイ語による交渉の結果、インドネシア人審判との同室をもぎ取りました。どうもプーケットルールでは既に一人がチェックインしている二人部屋がある場合、後から来た一人に新しい二人部屋を提供するのは難しいようなのです。当初は既にチェックインしているロシア人審判との同室でなければだめだ、あるいは同室となるインドネシア人審判が到着するまでチェックインできない、と言われたのです。
さて、無事チェックインしたものの、このホテルへの滞在は9日までの3泊です。講習は大会で任務に就く審判の選抜も兼ねているため、選抜されれば大会審判として選手も泊まるこのホテルからは隔離されます。選抜されなければ…どこに行けばいいんだ?
聞けば16時に3階に集合して、審判講習開講式が行われるとのこと。まだ大分時間があるので、両替してお昼を食べることにします。ホテルから近くのショッピングセンターまで徒歩10分弱。銀行で両替、お昼をKFCで済ませ、ホテルから見えたモスクを見学しました。そういえば、ルピアからの両替は断られ、リンギットは50以上じゃないとダメ、とこちらも断られました(手持ちが5リンギット札だった)。東南アジアの眠れる(?)龍ならぬガルーダの通貨が断られるとは…おかげで想定よりも手持ちのバーツが少なくなってしまいました。
モスク周辺にはハラールレストランやムスリム経営のゲストハウスがありました。プーケットは4割程度がムスリムということで、モスク周辺以外にもハラールマークを掲げるレストランや屋台を多くみることができました。マークを掲げていなくても、料理人や販売者が一見してムスリムのケースも多く、前回大会のタイ北部よりも外食時に困ることはなさそうです。
インドネシア組の飛行機が遅延したため、開講式はインドネシア抜きで始まりました。知った顔、知らない顔、かなりの人数です。ここでの出会いは同期の桜。そして、いつの間にか”聞かれる側”に回っている不思議さ…経験値低いんだけどな。インドネシア組もやっと到着し、全員揃ったところで解散です。
明日以降、スケジュール表によれば6時から22時までびっちり詰まってます。大会審判に任命されれば、これまた大会スケジュールは夜までびっしり。実際にはどうなるかわかりませんが、確実なのは今夜が今のところ唯一のフリーな夜、ということ。この空き時間を利用して、近くに宿泊しているオランダ選手の友人一家を訪ねました。楽しく旧交を温めましたが、初対面するつもりだった赤ちゃんは国でお留守番…残念。
意外とプーケットは日の出が遅く、冬の日本と大差ない6時半頃。そのため、6時集合の早朝運動の時点ではまだ外が真っ暗。ホテル4階の会議室を使って、審判全員でトゥンガル(ソロ演武規定型)のおさらいです。いやー…狭い。全員でやるにはかなり無理がある。隣や前後の人とぶつかりそうになりながらも1時間ほど汗を流します。その後、朝食を食べてから、大会会場へ移動します。この後の座学は会場施設を使って行われるとのこと。
既に準備されていたマットレスを使っての座学が始まります。結局、この日は午前に座学、午後は全員で審判動作の確認、という軽いメニュー。これ、リフレッシュ講座じゃなくて昇格講座だよね…4,5日缶詰で朝から晩まで座学と実技で鍛えられたジャカルタでの講座が懐かしいわ。(審判講座に関しては別にまとめてあります。)
審判の均質性やクオリティの向上にはあまり役立たない感じの超特急講座ですが、cizmaにとってはラッキーでした。なんせ、この日から体調は下降線の一途。お腹がゆるゆるどころかマーライオンで、それがこの先5日ほど続いたのです…この日の夜は38℃の高熱を発し、同室の審判が夜中に「随分静かだけど生きてるのかしら」と心配したとか。熱は一晩で許容範囲まで下がったので、過労だったんでしょう。
そういえば、この日は事務局指定の「チーム到着日」。審判講習受講中はチームと同じ宿泊先なので、先に到着した選手とは会うことができました。到着便が違う他のメンバーをロビーで待つ体力はなかった…
さて、昨日は早朝エクササイズがありましたが、今朝はなし。ぶつかりながらの運動はちょっとねーということなんでしょう。朝のバイキングコーナーでは昨日到着した日本チームに会うことができました。こういう時、チームウェアは便利です。視認性がぐっと上がる。
本日の講習は朝から夜まで「実技」。基本的には採点機械の実技講習…の予定でしたが、到着してみれば10日の開会式に向けて会場は本格的な設営作業中。とても講習に使える状態ではありません。仕方ないので、午前中は控室のような小部屋に受験級別に分かれ、それぞれに座学となりました。
幸い、午後には大道具のセッティングは完了し、予定通りに採点機械の実技講習が行われました。でも、採点機械を既に使ったことのある1級受検者に取っては、正直なところ、ただの自由時間です。
昼食と夕食は会場で取ることになっています。昨日は夕食後にはホテル帰参となりましたが、今日は少々夜の部が行われます。全員で輪になって、「こういう場合はどうなのよ」というディスカッションです。質問を出すのは主に3級受検者、回答例を示すのは講師に指名された2級あるいは1級受検者。cizmaも指名を受け、回答しました。それは違う、とは言われなかったので、正解だったんでしょう、多分。
講師が「自分は先生ではないので、正解は出せない。ただ、経験のある先輩というだけだ。」というスタンスだったんですよねぇ。それはそれでもいいんですけど、ディスカッションしっぱなし、させっぱなしっていうのは…結論出してください。そのための講師ではないのでしょうか。
夜の部があったとはいえ、割と早い時間にホテルに戻ることができました。なぜなら、昨日到着したチームの代表(マネージャー)を集めて、ホテルで組合せ抽選が行われるからです。この組合せ抽選に先立って大会ルールの説明(確認)が行われますが、これが審判講習講師陣のお仕事なので、ホテルに戻らないといけません。
聞くところではルール説明に引き続いて行われた組合せ抽選は、もう一種の罰ゲームだったとか。ここ数年、採点機械の導入と並行して、組合せ抽選もパソコンを使って行っています=諸々時間短縮。しかし、この採点機械のプログラムはもちろんのこと、組合せ抽選のシステムもインドネシアが独占しています。どうやらここで公平性に疑義を挟まれたようで…参加者の決を採った結果、今大会の組合せ抽選は”手動”で行われたと。手動で行われると抽選結果も「手入力」です。手入力となればミスも増えます。試合部門151名、演武部門48組分をマニュアルなやり方で組合せ抽選をして、なんだかんだとトータルの所要時間は前代未聞の4時間超。いやー…ないわー…
今日はいよいよ審判昇級試験の日です。合否発表と大会審判選抜結果発表も本日行われます。スケジュール表によれば、朝イチで「ランニングテスト」となっていますが・・・予想通り、やりません。ランニングテストをやる場所がない(苦笑)
まずは受験級別に別室で個別に実技試験です。1級受検者はチーム演武規定型のルグが試験科目。過去の講習では受験級に関わらず、全員がチーム演武規定型とソロ演武規定型(トゥンガル)を課され、さらにそれを全員が見ている前で実演しないといけなかったんですけどねー今回の講習は相当合格ハードルを下げている印象です。これが終わると、次は受験級別に控室に集められての筆記試験です。試験内容は多分、今までで一番簡単。ただし英語がわかれば。マレー語が基本のシラット審判たちは1級審判に求められていること(回答)がわかっていても、それを英語で表記するのがちょっと難しかったようです。最終的にはルールブックを鞄から取出し、表現を確認していました。ま、ルールブックを見て回答するのは毎度のこと。
終わった順に退出しますが、昼食は会場で提供されるため、講習も終わった今、やることがない。昼食の準備ができるまで、会場で練習する各国チームの様子や開会式のリハーサルなどを見て過ごします。講習の終了を記念して、まだ使われていない開会式のセットで同期生と記念撮影もしました。
講習の終了に伴い、審判講習参加者は昼食後に戻ったホテルで、チェックアウト手続きを促されます。合否発表も大会審判選抜発表もまだなのに、不合格で不採用だったら一体どこに泊まればいいんでしょうか…最悪、チームの部屋に転がりこむしかありません。
幸いにも無事合格し大会での審判業務も拝命したので、審判団が泊まるホテルに移動します。ホテルのグレードは…ダウンかなぁ。築年数は新しくなったけれど、アメニティが減った。しかも驚いたことにホテルのレセプションに洗濯サービスがなかった…チームが泊まっている前のホテルは近くにコインランドリーがあったのですが、新しい宿泊先の近くにはそれらしきものはなく。これはもう、毎日手洗い決定。
チェックインして一休みしたら、夜は大会事務局主催の歓迎夕食会です。ご飯、おいしそうだったなぁ。そう、cizmaは先日からのお腹不調が全く回復しておらず、ご馳走にほとんど手をつけることができなかったのです。
上の写真、あえて「某国」とキャプチャをつけてみましたが、全くもって”ティピカル”ですw ま、それはさておきこんなノリノリな人も発生するくらい、和やかに親睦を深めた夕食会でした。明日からはこの親睦を胸に声援を送ったり送られたりするのでしょう。対戦相手は敵ではなく、シラット仲間みな家族、を大会前に感じられるのはいいなぁ、と思います。試合で熱くなるとものすごいですから、こういう場がなかったらもっとすごいことになってしまいそうです。
今日の予定は開会式、VIP試合、演武部門予選。VIP試合とは、開催国が絡んで盛り上がりが期待される組合せを第一試合や最終試合としてピックアップして行われるものです。開催国の勝利が期待でき、かつ、試合展開が一方的にならないと思われる試合が開会式直後の第一試合、つまりはVIP試合として組まれるのが通常です。今大会のVIP試合は男子のタイvsブルネイが選ばれました。タイの選手が勝ち進めば、閉会式前に行われる最終試合もVIP試合となることでしょう。
開会式にはテレビ局の中継も入り、盛大に行われました。大会マスコットの微妙にかわいくない着ぐるみが2体も登場し、まあ、お金のかかってること。世界大会の盛り上がりをアジア大会での正式種目採用につなげたい、というPRなんでしょうね。でも開会式のVIPにOCA関係者らしき人はいなかったんだけどなぁ…最大のVIPはタイの社会文化大臣(多分)とPERSILAT会長の元大統領候補P氏。開会挨拶でのP氏は熱かった。曰く「シラットは敵を作るものではない」「正義のために戦うのがシラットだ(Fighter for Justice)」「シラットはユニバーサルなものである」云々。政治家ですから、直前に起こったフランスの新聞社襲撃に関して言及することも忘れません。タイではやはり、シラットは南部5県(州?)のムスリムが行うスポーツ、というイメージがどうしても強いのでしょう。演説の様子はYoutubeに上がっていたので、興味のある方はそちらをご視聴ください。
当然のことながら、選手宣誓と審判宣誓はタイの選手とタイの審判が担当しました。開会式ではためいた国旗は37あったはずですし、公式には「過去最高の参加国数39を誇る」とアナウンスしていたと思います。実際にはそんなにいませんでしたけどね(大会概要参照)
「こども(学生)の日」ということで、この日は学校がお休み。そのためか、会場は招待された学生さんたちで埋め尽くされていました。シラットを初めて見る子も多いんだろうなあ。開会式の様子はPhuketTodayというテレビ局のYoutubeアカウントで見ることができます。
開会式の後はVIPな第一試合。タイの選手が会場の声援を一身に受け、うまいこと(?)勝利しました。これこそ「負けられない試合」です。タイ選手も対戦相手のブルネイ選手も、気の毒と言えば気の毒。レイアウト変更のための休憩を挟み、演武部門の予選が始まります。
今大会は例年になく、ソロ演武の参加者が男女ともに多かったように感じました。やはり、複数の選手を揃えなければいけないペアやチームに比べ、一人で参加できるソロ演武(トゥンガル)には、非東南アジア圏からも選手を派遣しやすいのでしょう。予選の組を見てみると、男子A組:ベトナム オーストラリア マレーシア シンガポール スペイン 男子B組:フランス フィリピン ブルネイ インドネシア タイ 女子A組:タイ マレーシア ベトナム フランス オーストラリア 女子B組:シンガポール インドネシア フィリピン 日本 アメリカ ブルネイ となっていました。インドネシアやシンガポールからの移民が選手の場合もありますが、国籍上”非東南アジア”な参加者が増えるのは、いい傾向です。
演武部門は8名(組)以上から予選となりますが、驚いたことに今回は男子のペア演武(ガンダ)も予選となりました。この部門には東南アジア勢以外の参加がほとんどいないため、8組を超えることって滅多にないんですけどね。予選の組み合わせは A組:インドネシア スペイン オーストラリア ベトナム B組:シンガポール ブルネイ マレーシア タイ となっています。こうしてみると、次回開催国に名乗りを上げているオーストラリアが演武部門で頑張っているのがわかります。
初日ということで運営も審判側も若干慌てて緊張していたのでしょう、女子トゥンガル予選でいきなりの抗議事案が発生してしまいました。演武部門はどの種目でも3分での演武が求められ、±5秒までは減点対象ではありませんが、これを越えて±10秒となると減点5、さらにこれを越えると失格となります。つまり、演武時間が2分58秒ならお咎めなし、2分53秒だと減点5、2分49秒だと失格、ということです。
事件が発生したのは、女子トゥンガル予選A組のトップバッター、開催国タイの選手の演武時間。採点表を映し出す、競技委員長のストップウォッチと連動している時計が示したのは2分54秒。減点対象の演武時間です。しかし、演武開始と3分経過を合図するゴングの音を担当する計時係の時計は3分ジャスト。このゴングを合図にストップウォッチを押したコーチの手元の記録も3分。ええ、後ろで見てましたけどね…競技委員長が計時係に合図を出すタイミングと記録用時計のスイッチを入れるタイミングが微妙にずれてました。2秒くらいは差があったんじゃないかな。減点対象の演武時間では、上位3名に入って予選A組を勝ち残るのは厳しくなります。当然、猛抗議。でも、結論はいったん持越しです。
こんな状況を初っ端に作り出しては、競技委員長も平静を欠くのは当然で、この次の次、ベトナム選手が演武する際には時計を押し損ね、演武を中断・リスタートさせるという事態を引き起こしました。この空気が選手にも伝わったのか、A組最後の演武者、オーストラリア選手は落ちかけていた演武衣装を最終的に自ら払い落としてしまい、減点となりました。トゥンガルは演武衣装が外れると減点対象ですから。
男子ガンダ予選でもハプニングがありました。地域の大会には参加しないのに、世界大会にはマメに参加するスペインチーム。驚いたことに演武衣装を着用していません。しかも、3つ使わないといけない武器が2つしかない。これ、ルールを厳格に適用すれば演武する前に失格です。さすがにそれはあんまりですから、演武衣装と3つ目の武器を他チームから借用しての参加となりました。それにしても、演武衣装着用と武器3つ、というのは必須事項となって大分経つルールです。なんでこんなうっかりミスをするのか・・・
スペインが参加した男子ガンダ予選A組に、cizmaは審判として参加していました。ガンダの減点事項は事前申告にない武器の落下、あるいは事前申告したにも関わらず武器が落下しない、というものがあります。オーストラリアチームのガンダは「武器落下1回」との申告がありました。しかし、演武の中での動作は落下ではなく「置いた」と判断し、cizmaは減点対象としました。でも、減点対象としたのはcizmaだけだったようです。減点事項は5名いる審判のうち3名が賛同しないと効力を失います。競技委員長に指導され、減点を取り消しました。…が、未だに釈然としません。「落とす」と「置く」は違うのだ、と講習で言っていたばかりではないですか。その時に上げられた事例は選手Aが武器1を床に「置き」、武器2を床から「取り上げる」行為において、武器1は「落下」ではない、というものでした。オーストラリアチームの動きは、選手Aが武器1を持った状態で選手Bから武器2を奪い、(両手に違う武器では使えないので)手に持っていた武器1を床に置く、というものです。いやー落下じゃないでしょ。コーチは落下、と申告するべきじゃないと思う。いや、そもそも、競技シラット全体で「落下」と「置く」の共通認識ができていないのがいけないんだ!! まあ、共通認識を作り出す&浸透させるのはIFの仕事だから、ここで吠えても仕方ないか。
この日、開会式が始まったのは14時過ぎ。演武部門予選参加者も多く、ハプニングも発生したため、ホテルに戻ったのは23時でした…長い一日だったな。あ、減点で予選通過が危機に陥っていたタイのトゥンガル女子選手は無事、決勝ラウンドに駒を進めました。最終的に「すみません、競技委員長が時計のタイミングをしくじりました」とアナウンスして、彼女の演武時間は3分に訂正されました。それにしても、一番気合を入れた初日でハプニング続出では、先が思いやられます。OCA関係者が来ていたとしたら、その眼にこの競技はどのように映っているのやら。
大会が始まった昨日から、審判はホテルの会議室を借りて毎朝ブリーフィングをしています。集合時間が8時45分なのですが、今回の審判班長を務めるシンガポール審判から「8時45分というのは話し始める時間だ。全員が話を聞く準備ができているのが8時45分である。」との厳命が下りました。ゴム時間もあれなんですが、なんかこう、ドヤ顔に「俺たちシンガポーリアンは規則を守るんだぜ!!こんな基本的なこともできないから君たちは発展できないんだ。俺たちの言うこと聞いとけ。」的なオーラを感じるのは、cizmaがインドネシア畑どっぷりで被害妄想気味なんでしょうか。言い方がいちいち癪に障る、とは少々言い過ぎですが…インドネシアに慣れた結果、大分忘れてきましたが、「5分前行動」が基本で、明文化されていなくともゴミはゴミ箱へ、がデフォな日本人目線でみると、マレー系4ヶ国のノンビリ気質には正直、大した差はない。
そんな愚痴はさておき、今日は演武部門の決勝が行われます。cizmaが配属されたアリーナBでは女子トゥンガル、男子ガンダ、女子ルグ(チーム演武)があり、そのすべてに審判として任命されました。基本的に決勝で演武する選手と同じ国籍の審判は採点に使えないので、採点者を決定する担当者はなかなか頭が痛いのではないかと思われます。非東南アジア圏の審判は試合部門あるいは他競技(空手やテコンドー)出身者が多く、演武の採点基準を理解していないことが多いのです。とはいえ採点のコツというものはあるので、規定型を完全に理解できていなければ採点できないというわけでもない。でもそのおかげで、採点結果が似通ってしまい、隣のアリーナAも含めて演武部門男女各3種目計6種目のうち4種目で3位が同点という事態を招きました。
簡単に説明すると、演武の採点は5名の審判によって行われ、最高点と最低点をつけた2名分の得点を削除し、残り3名の審判がつけた合計得点で勝敗が決まります。この合計得点が同点だった場合、技術点の高い方>演武時間が3分により近い方>減点の少ない方>コイントス という順に勝者を決定することになっています。3位が同点になった種目の結果を見てみましょう。
男子トゥンガル:ベトナムとタイ、コイントスにてベトナムが3位
男子ガンダ:マレーシアとベトナム、技術点の優位でマレーシアが3位
男子ルグ:マレーシアとシンガポール、技術点の優位でマレーシアが3位
女子ガンダ:マレーシアとシンガポール、技術点優位でマレーシアが3位のはずが…
コイントスで勝利したベトナムのコーチは飛び上がって喜びを表現していましたねぇ。さて、休憩に入る前に女子ガンダでマレーシアに技術点で負け、4位となったシンガポールが「マレーシア組の演武衣装が規定違反だ」と抗議を入れた、と耳にしました。どうやら、規定上は左胸に貼るべきマレーシアシラット協会のロゴが右胸に貼ってあったとか。cizmaが配属されたアリーナBではなく、隣のアリーナAでの出来事ですから実際には見ていませんが。メダル獲得にはなりふり構わない姿勢はあっぱれですけど、過去にこの程度の規定違反で失格や減点は行われていないのです。自分たちが技術点で優位に立ち、マレーシアが4位だったら出さなかったクレームだと思います。このクレームを決着させるのは技術委員と協議委員長と審判長と採点を担当した審判たちです。どうなることやら。
休憩を挟んで、演武部門の表彰式を迎えます。クレームはどうなったのかな、と思いながら表彰式を見学していると、驚いたことに男子トゥンガルの3位にベトナムとタイの選手が2名、上ります。コイントスで決着がついたはずでしたが、銅メダルを2つ出すことにしたようです。クレームに対する対応は結局、女子ガンダのシンガポールの抗議は受け入れられず、妥協点としてマレーシアとシンガポールの両組を同点3位とし、双方に銅メダルを出すことになりました。こうなると、他種目の同点3位にも同様の措置を取らないことには整合性が保てません。そんなわけで、男子トゥンガル、男子ガンダ、男子ルグ、女子ガンダ、で前代未聞の3位が2組という結果となりました。さらにおまけで女子ルグもマレーシアとシンガポールの双方に銅メダルが授与されました。
これにはマレーシアが抗議の声を上げています。女子ルグは同点3位ではなく、5点差で3位マレーシア4位シンガポールという結果だったからです。4位にも銅メダルを授与する、と事務局側が本気で勘違いしたのか、次回SEAゲームズ開催国のシンガポールに気を使ったのか…いや、そもそも、シンガポールは明白に4位だったわけですから、表彰台に呼ばれた時点で「間違いです」と申告するべきじゃないの?これで「シンガポールはルールを守る」とドヤ顔されてもなぁ。まあなんだかんだで、想定外の銅メダルは11個授与されています。事務局は予備を使い果たしたのではないでしょうか。そして、女子ルグの余分な銅メダルが返却されたという話は聞こえてきません。そんなもんよねー
表彰式の後、試合部門が開始されました。なんと日本選手は2名とも今日が試合です。でもどちらも隣のアリーナAで行われたので、cizmaは見てません。配属先では10試合が行われ、そのうちの6試合に採点審判として入りました。
このうちの一つはカザフスタンvsインド。一体どんな試合になることやら、と思っていたら…インドは期待通りに体重超過で失格。期待通り、というのもあれですが、インドチームは毎大会、体重超過で失格の選手を輩出しています。インドの親分は国際審判資格を持っているのですから、もう少し自国選手の体重をきっちり把握して管理したらいいのに。東南アジアのご飯、おいしくて箸(手?)が進むのはわかるけど、遠路はるばるやってきて試合もせずに失格では選手が気の毒です。そして対するカザフスタンは時間に試合場へ現れず、規定の呼び出し回数と時間を超過して不戦敗となりました。選手がどっちも来ない試合は初めて体験しました。
今日は昨日より少し早め、22時にホテルに戻れました。明日からはもう、試合部門しかありません。夜の部、やるのかなぁ…
ひたすら試合が続く一日が始まります。予定では午前・午後・夜の3部構成。審判団の集中力はもつんでしょうか。配属されたアリーナBでは24試合が行われ、うち10試合で採点を担当しました。世界大会でのレフェリーでびうもするはずだったんですけど。結局、担当試合の対戦相手が現れず、不戦勝の試合となってしまいました。マレーシアvsウクライナの女子を裁くことになっていましたが、負けを恐れてウクライナ選手はどこかに行ってしまったんでしょうか?後で聞くところによれば、事前計量の時間がわからずホテルに戻ってしまっていたとか。言葉の問題があったとは思えませんけれど、不戦勝やレフェリーストップ、医務班案件が発生すると想定していたよりも早く呼び出されてしまったりしますからね。しかも今大会は昼食・夕食の時間を明示していません。昼時、夕食時に試合終わるとそこで休憩が入る、ということになっていました。確かにこれでは「何時にスタンバイすればいいかわからない」というのも道理ではあります。
ネタになるような試合があったような気もしますが、もうあんまり覚えてないな。ブログを見返すと、審判活動記録帳が水没した日、とありますね。ペットボトルを鞄に横にして入れたのが敗因です。蓋の閉まりが甘く、鞄の中に水溜りができてました。記録帳の水没はショックでしたが、カメラと携帯が水害を免れたのは幸いでした。記録帳はプロジェクターの排気口で乾かし、なんかガビガビで過去の記録が滲んだものになってしまいました。でもまだ使える。っていうか使う。
この日は会場で夕食を食べたら終了、ホテルへ帰参となりました。結局、この日以降、夜の部は行われていません。審判団の集中力等を考えるとありがたい話ではありますが、夜の部もやれば大会日程をもう少し短縮できるように思います。さすがに到着、選手登録、開会式、本番、閉会式と10日間の日程は長すぎです。せめて1週間くらいにしてくれないと、休みを取るのが厳しい。滞在費もその分嵩みます。恐らく日程が長すぎることが原因で、政府援助のない常連ヨーロッパ国が参加していないのではないでしょうか。
夜に自由時間ができたので、ちょっとコンビニでも行くつもりでロビーを通ると、審判仲間がたむろしています。どうもタイの審判が開催国のジモティとしてどこか観光に連れて行ってくれるようです。その辺を周るのかと思って気軽について行ったら、なんと行先はPatongビーチ。滞在しているプーケットタウンからは30分以上かかる道のりでした。こういうザ・観光地のビーチはほとんど行ったことがありません。なんていうか、(イメージ上の)クタと歌舞伎町をごった煮にしたような場所でした。しかも、ポールダンス(ただし素人っぽさ全開)を初めて見ちゃった。それをバックに写真を撮りまくっているマレーシア、インドネシアのおじさん審判たちが・・・こう・・・コメントしづらい(苦笑)
プーケット島民の40%がムスリムということで、ムスリム観光客も割と来るのでしょう。ケバブとインド料理、アラブ料理の表示をよく見ました。ケバブはどこにでもあるね、とドイツ人審判と話したり。あとはロシア語の表示が多かったです。昨今のルーブル危機でどうなってるかわかりませんが、ロシア人には旅行先として西欧や東アジアより、南国が人気なんでしょうか。数年前のバリでもロシア語表記を多く見た記憶があります。
自分たちの滞在エリアが観光地プーケットの中でもどちらかと言えば僻地であることを認識した夜でした。でもこんな騒々しいところの近くじゃなくてよかった。ちょっとそこまでのつもりが意外と遠くに連れ出されたので、ホテルに戻ったのは日付が変わる直前でした。
今日もまた、ひたすら試合。配属先では21試合(予定上は19試合、最後に2試合追加)が行われ、9試合で審判を務めました。さらに1試合でレフェリーだったんですが・・・あれ、また不戦勝ですか。そういえばさっき対戦相手としてスタンバイしていた選手、体調悪そうだったもんなぁ。計量終了後、待機エリアに居たと思ったのが、気づけば医務班のところで暗い顔してもの。どうやらタイ料理がお腹に合わなかったようです。ちなみに対戦カードはマレーシアvsカザフスタンでした。
夕飯は18時頃には用意されます。この日はこの夕飯準備がされる前に試合が終わる、という順調さを見せました。17時半にはアリーナBは今日の予定を終了させていたのです。さあ、夕食を食べてホテルに戻るだけ、昨日より早いぞwとアリーナBの審判が若干ウキウキと解散しかけたところ・・・なんと隣のアリーナAはまだあと4試合残っていることが判明します。残り4試合ということは、ざっくりあと1時間は終わらない。具体的に何があったのかはしりませんが、負傷退場やらなにやらで時間のかかった試合が多く発生したのでしょう。結局、残り4試合の半分、2試合をアリーナBで引き受けることになりました。
随分と早くホテルに戻れるはずだったのですが、最終的に昨日とほぼ同じ時間に帰参です。審判の一部は夜の観光に出かけたようでしたが、この日はホテルの部屋でのんびり過ごしました。
実は今回、隻腕の選手が大会に参加しています。肘から先がない、豪代表の男性。豪州にシラット人口はそれなりにいるものの、競技シラット人口はそう多くないようです。国内予選を勝ち抜いての派遣というわけではない、と聞きました。とはいえ、以前から面識のある選手でベテランと言っていい”強い”選手です。結果は11日の初戦に勝利、12日の第2戦は負け。
競技シラットはいわゆる健常者であることが参加条件としてルールブックに明示されておらず、また、現時点では「パラリンピック」に相当する障害者を対象とした大会が存在するわけでもありません。肘から先に義手がついていたら少々問題ですが(格闘技なので凶器になってしまう)、そういうわけでもなく、本人に出場の意志があるのなら、止めるものでも眉を顰める類のものでもないと思いました。でも、審判席の彼への反応はさまざまです。東南アジア勢は基本的に「なんで出場を認めたんだ」というスタンス。意外なことにシンガポールも同様の反応をしていました。曰く、「対戦相手が気の毒だ」「怪我させたら良心が痛む」「弱いものいじめみたいでいやだ」などなど。なるほどねぇ・・・対して、アメリカや韓国、ヨーロッパは称賛モード。弱者が社会で守られる存在か、健常者ルールに合わせて自立する自己か、の違いでしょうか。ふと、南アフリカのピストリウス選手(今は被告?)のことを思い出しました。北京五輪は連盟に出場を認可されませんでしたが、その後のロンドン五輪では出場を果たしています。彼が陸上トラックの400Mなど個人種目ではなく、なんらかの対人種目の選手だったらどうなっていたのでしょう。
試合部門も佳境に入り、午後には決勝戦が組まれています。午前中に準決勝が行われたクラスの決勝は、明日の休息日を挟んで最終日の16日に実施です。午後の決勝は2試合やってメダル授与、2試合やってメダル授与の繰り返し。試合を全部やってからメダル表彰式にしてくれれば、審判は早い時間に解放されるんですけど。
この日のハイライトは恐らく、マレーシアvsタイの男子Dクラス。マレーシア選手はSEAゲームズの金メダルを取り逃がしたベテラン選手(リンク先の試合6)。SEAゲームズ後の雪辱とばかりに金メダルへの意気込みは大きかったと思います。それがなんと驚きの失格負け。指導>注意1>注意2>警告1>警告2の累積で警告3までいってしまったようです。
シラットの試合は直径8メートルの円の中で行われます。この円の外、場外に出ることは意識・無意識にかかわらず軽度違反事項として指導対象です。一度指導を受けた軽度違反事項を再度繰り返すと注意1を受け、マイナス1点。同じ軽度違反事項を再び犯すと注意2でマイナス2点。次は警告1でマイナス5点。その次は警告2でマイナス10点。cizmaがふとスコア表を見た時は、この警告2が出された状態で、マレーシア選手のスコアがマイナス10点越え、という目を疑うものでした。何が起こったんだろう?と思う間に再び警告が出され、そのまま失格となりました。
対戦相手に押し出されての場外と、相手の攻撃を避ける過程での場外は扱いが異なります。前者は押し出しが注意事項となり、後者は場外に出たことが注意対象となります。タイが押し出していたのか、マレーシアが場外に出たのか、は大きな違い。そして当然、マレーシア選手(と関係者)はタイの押し出しを主張していたようです。実際のところは隣のアリーナで行われていたのでわかりません。この減点の積み上げがなければマレーシアが勝てそうな試合だったのかどうか、あるいは減点とは無関係にタイが優位だったのか。いずれにせよ、SEAゲームズに続いて自分の納得のいく形で試合が終われなかったマレーシア選手は大荒れで、スコアを映し出すプロジェクターとその台を引き倒して退場していきました。
表彰式をボイコットするかな、と思いましたが、説得されたのでしょう。少し遅れて出てきました。いい選手なんですけどね。運がないのかな。ちなみに、この試合を裁いたインドネシア審判は最終的に今大会の最優秀審判賞をもらっていました。押し出しではなく自分から場外に出ていた、ということなのでしょう。
そういえばムカつく事も発生した日だった…自分がまだまだ未熟な審判であるのは認める。それでも最善を尽くして公平公正に常に同じ基準で採点をしている。少なくとも、しようと努力している。もちろん、「あ、失敗したな」と思うこともある。でも、それは他意があっての失敗ではない。cizmaの未熟さ、失敗を自分たちへの意趣返しのように感じるのは筋違いだ。そう感じるのであれば、意趣返しされる心当たりがあるのか、と問いたい。開き直りだけど、完璧な審判なんて存在しないのだ。ま、そんな感じ。いや、まずは自分が審判技術を磨くことなんだけどね。そしてスルー力も必須だな。
今日の試合数は昨日までの半分。表彰式を組み込んでも、昨日より早く会場から解放されました。明日は休息日でのんびりできるし、夜の町にちょっとお散歩です。男性陣は再びプーケットの歌舞伎町観光とそこで行われるムエタイ見物に出かけたようですが、女性陣は近場のショッピングモールや屋台(?)でお土産品の物色。
なぜか大きなシラットの大会では、決勝日前日にオフ日が入ります。ファイナリストに休息を、ということなんでしょうか。でも昨日、すでに決勝戦を一部やってるんですけどね・・・そして、大概オフ日は観光日で、開催国出身の地元審判がガイドとなり、審判団を観光に連れて行ってくれます。でも、cizmaはこの観光について行くことができません。なぜなら、”試合がない”日であることを利用して、世界プンチャック・シラット連盟の会合が開かれるからです。試合がある日に会合を開催すると、会合参加者(各国シラット協会代表)が観戦できなくなります。とはいえ、夜は試合がなかったわけですから、その空き時間に会合をやってもよかったのでは。どうしてもオフ日(観光)を確保したいのなら、夜も試合をして大会そのものの開催日程をもう少し短縮して欲しかった。もう、全体で10日間は長すぎです。
会合は9時から12時、午前中で終わる予定・・・でした。開始が9時半、と30分遅れ、かつ、会合参加者がそれぞれに4年前の前回会合から現在までの活動報告と今後の展望を話すものだから、当然12時なんか終わりません。予想の範囲内ではありますが、疲れる。お昼休憩を挟み、結局、解散したのは15時半過ぎだったと思います。
それはさておき、会合でのビックニュースはなんといっても、2016年のアジアビーチゲームズ@ベトナムでの正式種目採用決定と、2018年のアジア大会の開催地がインドネシア、の2点でしょう。どちらも既知の情報なのでサプライズではありませんが、改めて連盟側からアナウンスされました。2018年のアジア大会における競技種目はまだ検討事項であり、なにも正式発表はありません。しかし、開催地がインドネシアということで、競技シラットが正式種目として採用されることに相当楽観的なようです。なんといっても世界プンチャック・シラット連盟の会長さんは元大統領候補な有力政治家ですから。スポーツと政治は別ものですが、スポーツ団体に政治力が必要ではない、ということにはなりません。
それにしても競技シラットの世界への普及、ビックイベントへの採用を目指す姿勢とそのロビー活動は、どうにも実情と乖離しているように思えて仕方がない。普及とロビー活動に協力を惜しむものではありませんが、競技シラットはそれだけで独り立ちできるものではなく、伝統流派という足腰があってこそ自立できるもの。その足腰が弱まりつつあり、あるいはそういった足腰のないまま競技シラットを受け入れた状態を「シラット人口が増えた」と言えるのか、疑問に思います。まあ、それでもどこかのタイミングでシラットの奥深さに気づき、足腰を鍛えよう、となる人もいるわけで、入口はいろいろでいいんです。ただ、お題目として「オリンピック種目採用」を唱えるなら、必要なのは政治力だけではなく草の根での広がりじゃないかな。
関係者の尽力には敬意を表します。でもやっぱり、今の「目指せオリンピック種目!行くぜ、アジア大会!!」が身の丈にあった活動目標とは感じられないのが正直な感想です。
会合終了後、マッサージを受けて疲れを癒し、観光客らしく日没スポットを目指します。島内随一の日没スポットということで、人・人・人。でも残念ながら水平線に雲がかかってしまい、きれいな日没を見ることはできませんでした。
長かった大会も今日でやっと終わり。通例に倣い、最終日の決勝は一つのアリーナで行われます。金曜礼拝のための中断もあり、6試合しか行われませんでしたが終了は15時頃。
閉会式直前の最終VIP試合として選択されたのは、男子Bクラスのタイvsインドネシア。期待通り、タイの勝利で大会が締めくくられました。閉会式では最優秀選手(男女)と最優秀コーチ、最優秀審判が表彰された他にも、今大会の運営にあたって功績のあった人たちに記念品として金銀銅のメダルが入った盾が贈られました。この記念品、昨日の会合で各国にも配られています。もう一体どれだけの数のメダルを作ったのか。
最後に次回開催地に予定されているメルボルンの観光案内ビデオが流れ、オーストラリアの協会会長に旗が渡されてお開きとなりました。こんな大々的に次回開催地への引き渡しをしても、実際にオーストラリアで実施されるかは不明なのが、安心のシラットクオリティ。実際問題として、政府の強力なバックアップがないとオーストラリアでの開催は無理でしょうね。まず、参加者の大部分を占める東南アジア・中央アジア・西アジア・南アジアの選手団入国手続きがスムーズにいくかどうかが危ぶまれます。それに加え、ヨーロッパ諸国にとっても実は相当な「僻地」です。日数と予算が組めない、ということで既に反対の声が上がりつつあり・・・そして日本からもオーストラリアは意外と遠いんですよね。東南アジアへ行く予算の倍は必要となるので、できれば開催地を変更して欲しい(苦笑)
夜にはお別れパーティがPatongエリアのホテルで開かれました。開会式・閉会式といい、メダルの記念品といい、このパーティといい、随分とお金を使った大会だと思います。参加費が高いのも納得です。本音を言えば、パーティはもう少しこじんまりとして構わないので、参加費をもう少し低くして欲しかった…
明日の朝にはチェックアウト、トランジットのシンガポールを経由して、冬の日本に向かいます。
行きも帰りもシンガポールで長めのトランジット時間を設定してあります。兄弟子に会っていろいろと話したいこととかあったんですが・・・タイミング悪く、行きも帰りも兄弟子不在。とはいえ、兄弟子がいないと誰も会う人がいないというわけでもないので、それはそれで短いシンガポールを満喫です。年末年始はインドネシアでしたし、その後はリゾート地に居たのでなんとなく忘れてましたが、シンガポールでそういえば”新年”なんだな、と思いだしました。
シラット界隈をうろついているいるとシンガポールもマレー文化圏、マレー人主体のエリアだと勘違いしてしまいます。でも、実は中華系エリアなんですよね、ここ。街中がキラキラと新年を迎えて迎春・来福モードでした。
今回の旅では都合4回、6個のドリアンを食べることができました。一人でまるまる1個食べたわけじゃないですよ。一番おいしかったのはバンドゥンのドリアン。でも3個買って1個は外れだった。タイのは果肉も厚くおいしかったけれど、匂いが抑え目の品種だったようで、どうもドリアンを食べた満足感に欠ける。シンガポールのドリアンは匂いもそれなりにあり、果肉の厚さと味は満足のいくものでしたが、値段にお得感があまりなかったなぁ。結局、当たりを引き当てられればインドネシアのが一番。でもそれが一番難しい…
数年ぶりに会う在星港の友人と空港で2時間ほど女子会を楽しんだ後、機上の人となりました。成田発着のシンガポール航空はたまに利用しますが、羽田行は初めてです。大誤算だったのは、羽田行の機体がB777だったこと。一世代前の機体と言ってもいいのかな?何が誤算って座席に電源がないってことです。最近の飛行機(LCCを除く)は座席で電源を取れることが多いので、電波を切って携帯で音楽再生しながら寝てます。電源を取れないと到着した時に携帯の残電池が少ない状態になってしまうんですよね。まさか羽田行が古い機体を使ってるとは思わなかったわーシンガポール<>羽田ってドル箱じゃないのかなぁ。残念。
3週間ぶりの日本は寒かった。
2016年にはビーチゲームズ、2018年にはアジア大会。競技シラットの目指せオリンピック!な方向性に思うところはあるものの、現実問題として大会があり選手がいるのであれば、ぐずぐずしてはいられません。ビックゲームに選手を派遣するためには、いろいろと形を整える必要があり、交渉事も事務仕事も増えることでしょう。1996年のJAPSA設立から20年となる節目の2016年を、ビーチゲームズへの選手派遣という形で迎えられるようにがんばります。インシャーアッラー