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映画「民族の師 チョクロアミノト」

チョコクロアミノ酸…じゃない、チョクロアミノトの映画をTIFFで鑑賞。TIFFには黄金杖かスディルマン将軍を期待していたのですが、まあよし。
(以下、ネタバレ含みます)

チョクロアミノト、名前は知っていても功績は知らない。でも、のっけのシーンでやられた。元がイケメン俳優のレザ・ラハディアンだっていうのもあるけど、「私は逮捕拘束されたのではなく、自ら出向いたのだ。」ってかっこいいわぁ。毅然とした態度に惚れる。
そして少年期に戻って人格形成の過程がさっと描かれ、結婚。結婚のシーンはカルティニが疑念を呈した卵割り。この風習は男女の役割分担がどうこうっていうか、普通に食べ物としてもったいないよなあ、と思う。食べ物を粗末にしてはいけません。
上映終了後のプロデューサー(クリスティン・ハキム女史含む)トークで言っていたとおり、彼の人生は娯楽作品向けではない。戦争に参加するわけでも、逮捕投獄監禁されるわけでも、ひどい裏切りにあって大ピンチになるわけでもない。もちろん、いろいろと試練はあるけれど、絵柄的に地味。そこを音楽と笑い、そしてオランダの鬼っぷりが埋めている(と思う)
音楽はそのシーンで採用してる曲に意味が絶対あるはずなんだけど、それがわからなくて残念だったかも。追い出されたチョクロが帰参するシーンで舅がワヤンの一節と思われる歌を口ずさんでたんだよなあ。あれはどんな歌だったんだろう。
笑いは基本、ジャワ語が醸し出してた。ちょいちょい、小間使いのおばちゃんとスタンブルの道化とお調子者の古株がそれぞれに笑いのシーンを挟んで、重く進む話に息抜きをくれた。…んだけど、会場からは反応が薄い!インドネシア人とおぼしき一角からしか笑いが起きない。日本の映画館は概してお行儀よく「鑑賞」するもんだけど、コメディ映画じゃなくても笑おうよー
そしてオランダは鬼だった。たった3年でそんなオランダ統治300年を上回る悪評を残したダイニッポン(日本軍政)って一体。加えて「今もまだ経済的に植民地だよ(日本車率、驚異の97%)」って冗談で言われる。それを無邪気に親日だから日本製新幹線とか意味がわからん…脱線。
ガルットのシーンではスンダ語だったり、バンドゥンでは頭巾の巻き方がスンダ仕様だったり、下調べや時代考証に長期間かけただけはある。私自身詳しくはないけれど、説得力のある美術(小道具、衣装、背景など)だったんじゃないかな。
チョクロ師は基本、眉間に皺がよってる感じだった。そんな彼がなぜ「民族の師」なのかは、少々わかりづらいかもしれない。わかりやすいアジテーターではないし、弟子たちが功名するのは彼の死後。インドネシアの独立もそう。しかも、弟子のクスノがブンカルノだって、最後の字幕まで確信がもてなかったよ!っていうかスカルノってば師の長女を嫁にもらっておきながら、一夫多妻だったのかぁ。本当に女好きだったのね。(それだけ魅力的でもあったのでしょう)
チョクロアミノトの言葉は映画なので当然、歴史としての主張とともに、現在の情勢にも訴えるものがあったと思う。字幕では聖遷や巡礼と訳されていた「ヒジュラ」これをキーワードに進めた物語は、民族として(途中、ネイションとも誰かが言っていた)のそれではなく、個々人の内面における次のステージへ段階を追って「移る」こと、それに必要なのは知識と信仰、とまとめられた感がある。思考することをやめない、が心に残る。
あと辛亥革命、ロシア革命、第一次世界大戦の与えたインパクトを見た。スピード感の問題であって、世界は結局、今も昔も連動してるんだな、と。

最後にハキム女史とツーショット撮ってもらいました。こういうときに限ってカメラ持ってないんだよね…