デノクとガノン

山形国際ドキュメンタリー映画祭の東京上映でインドネシア作品「デノクとガノン」を鑑賞した。なんていうか、まあ、イスラムとかハラルとか新興市場とか中間層とか、おきれいなイメージは吹っ飛ぶよね、と。
映し出されるのは、正直なところ自分の周りには接点のない貧しさにある家族の日常。最初のシーンが生ゴミ漁りだったので、彼らの食事が生ゴミかと思ってかなり憂鬱になった。実は生業として営んでいる養豚の豚の餌だったんだけど。豚ってすごいもの食べてるんだな…
密着撮影されているこの一家、貧困層だけど家はあるし、そこに電気は通ってるし、携帯は持ってるし、お金を借りる担保にできる家財もあるし、バイクもあるし、なによりも一応、仕事をしてる。蒸発した父の残した借金はあれど、どん詰まりのド貧乏というわけではないのだと思う。おかげで、”そして誰も居なくなった”的な「枕の上の葉」のような陰鬱さは感じなかった。
冒頭の生ゴミが自家消費用ではなく豚の餌だったので、このシーンは衝撃度ナンバー1ではない。他の印象に残ったシーンは…

・二人の結婚式の映像がある。携帯での撮影だろうけれど、時代だなぁ。
・養豚稼業だけどKTPはムスリム。それはともかく、豚って本当に巨大で多産…
・唯一、家でも礼拝しているらしき母さん。ベッドの上でしてるよ。床が汚れてるんだね。
・プサントレンにぶち込まれていた中学生と思しき三男坊、学校ドロップアウト。こうして連鎖が発生するのか。
・豚の運び方が虐待レベルにみえる。あれが普通なんだろうけど。
・母さん、字が読めないのか!…海路郎さんと多分そう年代は変わらないだろうに。
・ワインとか言っていたあのお酒、酒類であることを差っ引いても体に悪そう。
・事故った次男の医療費が政府(行政)に補助された。貧困家庭に対する対策が機能しているということか。
・四男坊(小学2,3年?)と夫婦の女児(小学1年?)は最後まで学校に通うことができるだろうか。本人の意志と学費がどうなるやら…

一番びっくりしたのはやっぱり、母さんが文盲だったってこと。医療費補助の書類、全部サインじゃなくて拇印でした。長男のガノンに「字が読めないって大変だな、母ちゃんwww」って言われてた。インドネシアは2011年データで女性の識字率は90%以上。本人、どうみてもインドネシア独立後、学制が整ってからの年代だし、ここは僻地の外島じゃなくて一種の内地、中部ジャワなのに、まさか文盲とは。

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東京砂
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