どうなるシラットinアジア大会 続き

「アジア大会にシラットなし(<正確には単体での実施はない)」の記事が出たあと、インドネシアのシラット界隈は蜂の巣をつついたような騒ぎになっていました。曰く、「自国開催でシラットないなんて信じられない」「シラットは既に正式採用されたって話だったのに何があった」「シラットをプッシュしないなんて国は自国文化をないがしろにしている」うんたらくんたら…
これを受けてインドネシアシラット協会幹部のErizal Chaniago氏がコメントを出しています。
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Salam Pencak Silat:
terkait berita yg diterbitkan oleh pihak jpnn : dpt kami jelaskan bahwa:
1. Berita tersebut adalah salah tulis oleh pihak jpnn, dan sdh diklarifikasi oleh bpk Sutan Adil Wkl Ketua Komisi X DPR RI.
2. Pencak Silat tetap dipertandingkan pd Asian Games 2018-Jakarta.
3. Menurut Wkl Ketua Komisi X DPR RI, justru memberikan penguatan dan meminta kpd Kemenpora, khusus untuk Pencak Silat mendapatkan dukungan penuh dari Pemerintah baik dari segi pengembangannya diluar negri maupun dari pembiayaan, krn Pencak Silat adalah salah satu unsur Budaya Bangsa,
4. Kami membantah bahwa berita dari jpnn tsb adalah Tidak Benar.
Terimakasih.
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要約すれば、記事は誤報・シラットはある ということですね。

また、騒ぎの元となった記事を出したところがSAH Siap Perjuangkan Anggaran Pencak Silatという記事を出しました。SAH氏、グリンドラ党だったんですね。グリンドラの党首はインドネシアシラット協会の会長さんですから、早々に訂正というか火消しネタを提供せざるを得なかったのでしょう。

結局のところ、シラットがアジア大会にあるのかないのか。恐らく「ある」と思います。ただ、それはインドネシアシラット界隈が思っていたような、オリンピック公式競技である柔道やテコンドーと同等に「単独競技」としての実施ではない。事実、昨日の投稿にも書いたように”最初から”シラットは「単独競技」としての実施予定の枠に入ってません。「格闘競技」の枠に入る複数競技のうちの一つです。複数競技がどのように種目化され、なにが実施されるのかはこれからのロビー次第だと思います。「格闘競技」というパイを空手・柔術・武術・シラット・クラッシュで取り合う(分け合う)ということだと推測します。

ではなぜ、蜂の巣をつついたような騒ぎになったのか。これはもう、メディアのミスリードが主な原因でしょう。繰り返しますが、OCA側が提示してきたのは「最初から」格闘競技枠の一つとしてのシラットです。それを「アジア大会でシラットが実施される!」という浮かれ騒ぎ(<敢えて言います)の中で明示しなかった(ゼロではないけど、保険の特記事項みたいな扱い)。報道や発表が「単独競技としてではないけれど」と断り書きを入れてさえいれば、問題なかったのではないかと思います。例え5分の顔見世だとしてもSWにインドネシア人俳優が出ていることに熱狂できるお国柄です。4年に一度のアジアのオリンピックで”どんな形であれ”シラットがある、と聞けば喜ぶ人の方が絶対に多い。でも、何も言われなければSEAゲームズと同様にシラットが単独競技として、アジア大会でテコンドーや柔道と「肩を並べる」と勘違いするのは当然。「肩を並べた」という誇りに満たされたのに、後から「格闘競技で一括り」と判明したら、騒ぎになるのは自明です。
例:Pencak Silat merupakan salah satu dari enam olahraga non-Olimpiade olahraga resmi termasuk dalam daftar bersama 28 cabor Olimpiade(以下略)
=オリンピック28競技と共に、プンチャック・シラットは非オリンピック6競技のうちの一つである
>>実際に非オリンピック6競技の一つであるのは「格闘競技(martial arts)」です。この格闘競技のうちの一つがシラット、となります。

さらに混乱に拍車をかけたのはシラット連盟。連盟には「単独競技じゃなくてもいい、まずはアジア大会での実施実績を得る」という現実を見据えた判断があるように思えます。つまり、アジア大会での実施決定はイコールで「単独競技として」ではありません。単独競技ではなくとも実施することに変わりはない。そのためでしょう、シラット連盟発の文書には「シラットが実施されることに決定」としか書いておらず、「格闘競技の一つとして」という但し書きがありません。報道に断り書きがあまり見られないのは、連盟の報道発表の文面に問題があったのかもしれません。

自国開催なのにシラットを単独で実施できないことに憤りを感じる向きは理解できます。報道等で勘違いしていたのではなおさらです。とはいえ、ここで国(インドネシア)が自国文化をないがしろにしている、連盟は営業不足だ、というのはちょっと違う。インドネシアでのアジア大会開催が決定した後、連盟がインドネシアシラット協会を中心に各方面に働きかけ、国もそれに応えて支援したからこそ、格闘競技の一つという形ではありますが「最初から」シラットがOCAの実施承認リストに入ることになったのだと思います。そして、既に名前を挙げられているがために、「応相談」の単独競技としてシラットを推すことができなかったのではないかと考えます。

まーあれです、白馬の元候補だったら単独競技だったはずだ、とか、国はもっと自国文化に云々、とかはもう飽きた。国の保護・支援なしには立ちいかなくなってしまえば、民衆が長く受け継いでいく文化の主流から外れた先細りの未来が待っているのですよ。そうならないために頼るべきは国ではなく、自分で立って地道に種を撒くことだ…と自戒と決意をこめて。

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東京砂
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