映画「3(tiga)」

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大阪くんだりまで何しに行ったかと言えば、基本的には映画鑑賞。まあ我ながらフットワーク軽い。映画にシラットが使われている&チェチェップ先生が出演してると聞いては、行かないわけにはいきません。
残念ながらゲスト登壇のない回でしたが、ゲストの有無で映画の内容が変わるわけではないので問題なし。ここから先はネタバレ含む感想放談になります。でも、数日寝かせてしまったので、記憶不鮮明。
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アクション指導はチェチェップ先生と(多分)一番弟子のユディストラさん。スタッフでも名前を確認できました。映画の中では二人とも、セリフのある役が振られています。チェチェップ先生は主人公3人組のシラット道場師範=師匠、ユディストラさんはプサントレンの裏切り者(最後に泡吹いて自害)です。
この映画、一言で言うなら小学生の息子無双。いや、あのリカバリーっぷりは超人過ぎるでしょ。息子死んだ、とパパんが絶望するような怪我だったのに、あっという間に打たれたはずの左ではなく右腕を三角布で吊ってハッカー復帰って。しかも現場周辺の生きてる電波を拾って映像ハック…前振りがあったにしても、技術高すぎです。続編があるなら、彼を主役にネットゲリラでいいんじゃないでしょうか。
タイトルの「3」は主人公3人にかけてるんだと思うんですが、なぜ”アリフ・ラム・ミム”で「3人」なのかは、解説がないとイスラム文化になじみがない場合には、わかりづらいんじゃないかと思いました。本編で「アリフ」「ラム」「ミム」と区切った後、3人揃った状態に持っていき「アリフ・ラム・ミム」となるのも、回りくどいような。
最後には「イスラームは風変わりなものとして始まり、風変わりなものとして戻り行く。それゆえ、風変わりな者たちに幸あれ」というハディースのナレーションが入ります。有名どころなハディースのはずですが、そうと認識できるのとできないのとでは、監督の意図は観客への伝わり具合が半減しそうです。
ザ・レイドのような話の筋はどうでもいい(<褒めてます)、ただただアクションがしたい!という作品ではないと感じます。だからこそ、イスラムやインドネシアに不慣れだと要解説な部分が散見されたのは残念です。なぜなら説明なしでアクションだけ楽しめるかというと、そこまでじゃないから。
ザ・レイドはシラット組(狂犬、イコ、アサシン)とドニー・アラムシャーやジョー・タスリムといった他競技組のコラボが生み出す複雑さからくる面白味があったように思います。対して本作はシラットオンリー、それもチェチェップ先生が所属する流派パンリプール一択なので、悪い言い方をすれば単調。技やシチュエーションは多彩なのですが、どこを切り取ってもパンリプールという印象を受けました。しかも全編を通して格闘シーンがストップモーション映像なので、単調感を増長させます。一つ一つの動きはかっこいいんです。ストップモーションのおかげでスローモーションにしなくても参考にしながら動けそうですし、勉強になります。ただ残念なことにアクション映画好きが求めるであろう、アクションシーンにおける「手に汗握る」「ワクワク感」はザ・レイドに大きく水を開けられた感がありました。
筋や言葉、背景や世界観がイマイチわからなくても楽しめる、という映画にはなりきれてない。まあでも、基本的にはインドネシア国内に向けて制作した作品のはずですから、それでいいのでしょう。本作監督の最新作comic8はインドネシア国内で大入りのようです。そちらにもシラット組が出てるので、是非、東京で見たい。東京国際映画祭でお願いします。普通に劇場公開でも大歓迎。
あとはなんだったかなあ、ああ、あれだ、誰かチェチェップ先生に善人役をオファーしてください。それにしても、あの役はなにがどうなって政権の犬に成り下がったんだろう…道場が強制的に閉鎖されて、戦いに身を投じる前振りはあったけど、あの流れなら政権に反する側に組するのが筋じゃないのかなぁ。
映画が始まる前に「この映画はフィクションです。現実の世界、団体などなどに関係したり、そのいずれをも貶める意図はありません(大意)」と断りが入ります。この宣言がなかったら、娯楽作としての体裁も危うかったのでは。ちなみに、ある意味「オレタタ」エンドです。
つらつらと書きましたが、劇場公開されることになったら再度お金を払って見に行く。劇場公開なしでDVD発売(ジャスミンみたいに)ということになっても購入する。シラット炸裂!と宣伝していた「サラ」は2回観る気もDVDを買う気も起きなかったからなあ。「サラ」に比べればシラットのクオリティはレベルが違う。

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東京砂
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